みんなの推し絵本!

vol.37 三浦太郎さんの推し絵本

vol.37 三浦太郎さんの推し絵本

三浦太郎さん

vol.37 三浦太郎さんの推し絵本

思い出の一冊、大好きな一冊、渾身の一冊など、とっておきの“推し絵本”を紹介してもらうインタビュー「みんなの推し絵本!」。今回は、今年出版20周年を迎える人気作『くっついた』でおなじみの絵本作家・三浦太郎さんにご登場いただきます。

子育ての経験から生まれた『くっついた』

僕の実家は本屋なんですね。店と自宅がつながっていて、いつも「ただいま~!」と本屋から家に入る感じだったので、子どもの頃から本には親しみがありました。絵本もたくさん読んでもらったらしいんですが、実はあまり覚えていなくて。いつも忙しそうだったので、たぶん店の絵本をぱらぱらっと読んでくれていただけだったんじゃないかな。

高校時代にイラストレーションに興味をもって、イラストレーターを目指すことにしたんですが、当時は広告や雑誌での仕事のことしか思い浮かんでなくて、絵本というのはまったく考えてもいなかったんですよ。でも10年ほどイラストレーターとして仕事をしながら、自分の理想の仕事を求め始めた中で、たどり着いたのがボローニャ展です。ボローニャで入選したのが絵本の世界に入るきっかけとなりました。

ただ当時の僕は、絵本はイラストレーターとしての自分のひとつの表現方法であって、子どもに読むということはまったく考えてなかったんですね。子どもに読む絵本ということを考えるようになったのは、娘が生まれてから。『くっついた』は子育ての経験から生まれた絵本で、僕の絵本作家人生の中でも特別な一冊です。

モノクロでも森の色を感じる『もりのなか』

僕自身はほとんど絵本を読まないので、家にはあまり絵本がないんですが、娘が生まれてから子ども用の本棚を用意して、子どものために読む絵本を買いました。そのうちの一冊で、僕も気に入っていた絵本が『もりのなか』です。

『もりのなか』の特長は、色数が少ないこと。表紙は白と黒と茶色ですが、中はモノクロでまったく色がないんですね。だけど森の色が感じられる。僕は美大で版画を専攻していたので、この絵本の版画っぽさにも惹かれました。文章もいいですよね。声に出して読む面白さを感じます。「ぼくのさんぽに ついてきました」をくり返すところが特にいいなと。おやすみ前にちょうどいい絵本だと思います。

今年初めに『たいこどんどん』という絵本を出したんですが、これが『もりのなか』とは対極をいく内容で。『もりのなか』が色数を抑えた静かなパレードだとしたら、『たいこどんどん』は色鮮やかな騒がしいパレードという感じかな。「どんどん」から始まって、トランペットもやってきて「どんどん ぷっぷー」、笛も加わって「どんどん ぷっぷー ぴーひゃらぴーひゃら」と、次々に楽しい音が重なっていく“積み上げうた”の絵本です。

『もりのなか』では最後、現実に戻す役としてお父さんが登場しますが、『たいこどんどん』では途中、お父さんなのかお兄さんなのか、祭りのお囃子の人みたいにも見える男の人が出てきて、パレードをさらに盛り上げます。思わず踊り出しちゃうような、とにかく騒々しい絵本なんです(笑)。読み聞かせ会の盛り上げ役として読んでもらっても面白いのかなと思います。鳴り物なんかも入れたりしてね!

長年の課題をひとつずつ形にしていきたい

パレードの絵本はいつかつくりたいと、かなり前から思っていたんですよ。山下達郎さんの初期の頃に、パレードの曲がふたつあるんですけど、そのうちのひとつ「デイドリーム」は、歌詞にスカーレット、グラスグリーン、バイオレット、ショックピンク…と色の名前がたくさん出てくるんですね。僕の中では、ニューヨークのビルのはざまを色鮮やかなパレードが行くようなイメージで、その曲を聴くたび、パレードの絵本をつくりたいと思ってきました。『たいこどんどん』は、そんなかつてからの思いを形にした一冊です。

ただ、長年課題にしていたものを作品として仕上げるのは、すごく体力のいることで…昨夏に出した、前からも後ろからも読める『うみへ やまへ』もそうなんですが、寿命が縮まったんじゃないかってくらい時間がかかりました。でもあとどれだけ絵本をつくっていられるかわからないので、今後は未消化の課題をひとつずつ形にしていきたいなと思っています。

ミーテ プレゼント情報

たいこどんどん

三浦太郎さんの絵本『たいこどんどん』に直筆サインを入れていただきました。ミーテ会員3名様に抽選でプレゼントします。

※ミーテ会員登録がまだの方は、登録後、ご応募ください。会員登録はこちら

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応募期間
4月22日(火)~5月5日(月)

プロフィール

三浦太郎さん

三浦 太郎(みうら たろう)

1968年、愛知県生まれ。大阪芸術大学美術学科卒業後、イラストレーターとして活動。 ボローニャ国際絵本原画展で入選を重ね、スイス、イタリア、スペインなど海外でも絵本を出版。絵本作品に『くっついた』(こぐま社)、『ちいさなおうさま』(偕成社)、『バスがきました』(童心社)、『りんごがコロコロコロリンコ』(講談社)、『おはなをどうぞ』(のら書店)、『みち』(あすなろ書房)など多数。

http://www.taromiura.com/


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