絵本作家インタビュー

vol.5 絵本作家 三浦太郎さん(前編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェ インタビュー」。今回は、赤ちゃんのファーストブックとして人気を集める『くっついた』の作者・三浦太郎さんにご登場いただきます。絵本作家としては、海外でのデビューが先だったという三浦さん。子育てにまつわるエピソードや、絵本づくりにおけるこだわり、読み聞かせについてなど、楽しく語っていただきました。
今回は【前編】をお届けします。 (【後編】はこちら→

絵本作家・三浦太郎さん

三浦太郎(みうら・たろう)

1968年、愛知県生まれ。絵本作家、イラストレーター。大阪芸術大学美術学科在学中に、日本イラストレーション展入選、日本グラフィック展入賞。卒業後はイラストレーターとして、広告の仕事のほか、本や雑誌、教科書の表紙画などで活躍。イタリア・ボローニャ国際絵本原画展に6度入選。海外で出版された『JE SUIS...』『TON』で絵本作家デビュー。日本での作品に『くっついた』『なーらんだ』『わたしの』(こぐま社)、『まかせとけ』(偕成社)、『バスがきました』(童心社)、『おしり』『よしよし』(講談社)などがある。 http://www.taromiura.com/

子どもが生まれてから変わったこと

JE SUIS... くっついた

▲フランスでのデビュー作『JE SUIS...』と日本でのデビュー作『くっついた』(こぐま社)

イラストレーターとして活動する中で、自分に合う公募展があれば描きためた作品を出してみたいなと思ってたんです。そんなとき知ったのが、ボローニャ国際絵本原画展。どうやら僕も出品できるみたいだ、というのがわかって、じゃあ出してみよう、と。それが絵本をつくり始めたきっかけです。

そこでの入選をきっかけに海外で絵本を出したんですけど、その頃の絵本はちょっとアートっぽい感じだったんですね。それが子どもが生まれてから、作品の傾向が変わってきたんです。

日本でのデビュー作『くっついた』は、絵本の奥付にも書いてますが、娘とのエピソードがきっかけとなった作品です。うちの子はちょっと無愛想で、なかなか笑ってくれなかったんですよ。まわりの人からは「笑うようになったらかわいくてたまらないよ」と言われるんだけど、ほんとに笑わなくて。どうしたらこの子は笑ってくれるんだろう?と思ってたんです。

それがあるとき、子どものふくふくの、かわいいほっぺたを見ていて、なにげなく自分のほっぺたとくっつけてみたんですね。「くっついた!」って言って。そしたらそれに反応して、笑ったんです。そこから生まれた絵本が『くっついた』です。

実はもともと、丸と丸がくっつく絵本というアイデアはあったんですけど、それはもっとグラフィックっぽいものだったんですね。レオ・レオニの『あおくんときいろちゃん』(至光社)みたいな感じの、小さな丸と丸だったんです。ならそれを、赤ちゃんとお母さんがくっついた、とすればいいじゃないか、その前には動物同士がくっついて……と。イラストレーターとしてのアイデアと、お父さんとしてのアイデアが、またそこでも「くっついた」んです。

子どもがいないときだったら、グラフィック的な絵本になったかもしれないものが、子どもができたことで、こういう形に変化していったんです。子どもからアイデアをもらったというか、子育てをする中で新たなアイデアを見つけたというか、そういう感じですよね。

「盛り込まずシンプルに」がモットー

『くっついた』のあひるさん

▲シンプルに描かれた『くっついた』のあひるさん

絵本づくりにおける僕の一番のこだわりは、「盛り込まないこと」です。最初のアイデアの段階から、かなりシンプルなんですよ。タイトルも最初から決めていたりしますね。タイトルを決めると、そこからはずれられないじゃないですか。そしたら、それ以上はもう盛り込まないんです。

編集者と僕しか知らないんですけど、実は最初『くっついた』にはシンプルな背景があったんですよ。たとえばあひるさんのうしろに波が描いてあったりとか。途中でなんとなく足りない気がしてつけちゃったんですね。でも最後の段階で全部とっちゃいました。あひるの形もさらにシンプルにしていったんです。

描き込んでいくほどにどんどんおもしろくなっていく絵というのもあると思うんですが、僕の場合は、削っていくほどによさが出てくると思うんで、中途半端に描きこんだりせず、とにかくシンプルにと考えてますね。

それから、僕の絵本の最初の読者は、うちの子なんです。ダミーの段階から見せてますね。子どもの反応を見て絵柄の細かなところとか、言葉のニュアンスなんかを変えることもあります。

子どもの反応を観察していると、いろいろわかってくるんですよ。1回目、2回目、3回目くらいまでが一番重要で、ここが伝わってないなとか、今の言葉は理解してなかったなとか、ほんとに細かいことを言うんだなとか、そういうのを踏まえてもう少しここをこうするといいな、なんて具合で。印刷する前から何度も読ませてるんで、できあがったときには「これもう見たよ」なんて言われたりするんですけどね(笑)

子育ても読み聞かせも真正面から向き合って

わが家では子どもの寝かしつけ担当は僕。毎晩必ず3冊ずつ絵本を読んでます。長いの1冊、短いの2冊みたいに決めてね。何回も何回も声に出して読んでいると、『ぐりとぐら』や『だるまちゃんとてんぐちゃん』(いずれも福音館書店)がなんでいいのかとか、子どもはどんなところでわくわくするのかとか、わかってくるんですよ。読み聞かせをするようになって、声に出して読むことの重要性を感じるようになりましたね。

注意していることは、“ながら読み聞かせ”はしない、ということです。何冊も読んでいると、長いからちょっと飛ばしちゃえ、どうせわかんないだろうなんて思うこともあるけど、子どもはすぐそういうのに気付いて、「今のところ言葉が足りなかった」とか指摘するでしょう。『三びきのやぎのがらがらどん』(福音館書店)を読むときは、(どうでもいい感じで)「はい、がらがらどんだ~…」なんていい加減に読むんじゃなくて、(勢いよく)「がらがらどんだー!!」ってちゃんと読まないと。子どもってすごく敏感に親の心の状態を感じてるから、テレビを見ながら適当に読んでたり、ほかのこと考えながら読んでたりすると、すぐバレちゃうんですよ。

これは子育ても一緒で、“ながら子育て”はダメだと思うんです。“ながら運転”がダメなのと同じでね。遊ぶときも、読み聞かせするときも、自分がノッてやんないと、余計疲れちゃう。中途半端な気持ちでやってると、ダメなんですよね。いつも真正面から向き合って、がっぷり四つで組まないと。まぁ、そんな風にしていると、すぐ疲れちゃったりもするんですけど(苦笑)、疲れても、声が枯れても、真正面で向き合うことを心がけてます。


……三浦太郎先生のインタビューは後編へとまだまだ続きます。 (【後編】はこちら→


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