ホーム > みんなの推し絵本！ > vol.16 たんぽぽ・白鳥久美子さんの推し絵本

みんなの推し絵本！

vol.16 たんぽぽ・白鳥久美子さんの推し絵本

vol.16 たんぽぽ・白鳥久美子さんの推し絵本

思い出の一冊、大好きな一冊、渾身の一冊など、とっておきの“推し絵本”を紹介してもらうインタビュー「みんなの推し絵本！」。今回は、現在子育て真っ最中、第二子妊娠を発表したばかりの(※取材当時：2023年7月)お笑い芸人・たんぽぽの白鳥久美子さんにご登場いただきます。

絵本を開いて過ごした豊かな時間

14ひきのさむいふゆ: 作・絵：いわむらかずお; (童心社)

この絵本の感想を見る

子どもの頃に大好きだった絵本は、『14ひきのさむいふゆ』です。私の地元は福島で、冬は雪がかなり降るので外に遊びに行けないんですね。14ひきも、雪の降る日は木のおうちの中で、そりを作ったりおまんじゅうを作ったりして過ごしています。家の近くに、14ひきのシリーズに出てきそうな林や森があって、あの木の根っこあたりにおうちがあるんじゃないかとか、想像するのが楽しかったですね。

私は幼稚園の頃から、ひとり遊びばかりしている子でした。でも、14ひきのシリーズを読んでいる間は、自分も家族の一員になったつもりで楽しんでいたので、全然さみしくないというか、むしろとても豊かな時間を過ごしていたんです。自然の中での遊び方も、このシリーズからたくさん教わりました。

娘が生まれる前に、特に気に入っていた『14ひきのさむいふゆ』と『14ひきのもちつき』を買いました。娘はもうすぐ2歳になるんですが、絵の中に何かを発見しては「かっかがいる！」「とっとも！」などと指さして楽しんでいます。季節の行事もたくさん描かれているので、シリーズ全巻揃えて親子で楽しみたいです。

『もこもこもこ』への反応にびっくり！

もこもこもこ: 作：谷川俊太郎; 絵：元永定正; (文研出版)

この絵本の感想を見る

『もこもこもこ』は、お世話になった小学校時代の先生から、出産祝いにいただきました。初めて見た時、正直「なんだこの絵本？」と思ったんです。先生がくれるんだから、何かあるんだろうな、くらいに考えていました。でも実際に娘に読んでみたら、ものすごくはまったので、びっくりしてしまって。一時は「読んで」と持ってくる絵本は『もこもこもこ』だけ、というくらいお気に入りになっていました。

何がそんなに面白いんだろうと不思議に思っていたら、ある時、音に反応しているんだなと気づいたんです。同じ「もこ」でも、その日の気分でちょっと変わりますし、私の読み方と夫の読み方も違うので、それも面白かったんでしょうね。娘が自分で絵本を広げて「もこ」「ぱく」「しーん」と読んでいることもありました。何度も読んですっかり覚えていたようです。

擬音の面白さがここまで子どもを楽しませるのかと、とても驚きました。物語があるわけではないけど、想像力を働かせれば物語があるような気もする…みたいな、不思議な絵本ですよね。自分では買っていなかったと思うので、プレゼントしてくれた先生に感謝しています。

絵本は心のお薬のようなもの

たいせつなきみ: 作：マックス・ルケード; 絵：セルジオ・マルティネス; 訳：ホーバード・豊子; (いのちのことば社)

この絵本の感想を見る

昔から絵本が好きで、中学・高校時代も絵本を買って読んでいました。中でも『たいせつなきみ』は、忘れられない一冊です。木でできた小人たちの村が舞台で、小人たちは、お星さまシールとだめじるしシールを互いに貼り合って暮らしているんです。要はレッテルですよね。主人公の小人は、だめじるしシールばかり貼られて落ち込んでいるんですが、ある日、まったくシールの貼られていない小人と出会って…というお話です。

思春期で多感な時期、自分の容姿や周囲の視線ばかり気にしていたんですが、この絵本を読んで、周りが自分のことをどう思おうと関係ない、ありのままでいいんだって思えたんです。なんだか絵本に救われた気がして、思わず泣いてしまった記憶があります。

もともと人付き合いが苦手で、本ばかり読んでいた私にとって、本は開けば楽しい世界に行ける、現実逃避のためのツールでした。でも今振り返ってみると、現実と向き合うためのツールとしても大事なものだったんだなと感じています。特に絵本は、ちょっと疲れた時にぱっと読んで、またがんばろうって思える、心のお薬みたいな存在。これからもいろいろな絵本に出合っていけたらなと思います。