毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、竹下文子さんが文、田中清代さんが絵を手がけた『ねえだっこして』。2004年に出版された人気作です。
飼い主のお母さんに赤ちゃんが生まれた猫の気持ちを描いた絵本です。お母さんに抱っこしてほしい気持ちと、大きくなったから平気だもんと強がる気持ちが葛藤する、猫の切ない心情が描かれています。
表紙を見てまず、猫の切ない表情に、目が吸い寄せられたという方も少なくないのでは。「抱っこ」ということば、赤ちゃんをひざに抱くお母さん、生成りの背景に淡い色付け、猫の毛並み。すべてがやさしくあたたかい中、猫の目は曇り、じっと何かを待っているようです。まだ幼さの残るこの猫は、一体どうしたのかと、絵本のページを思わずめくることでしょう。
お話を読むと、主人公は猫で、飼い主のお母さんに赤ちゃんが生まれたようだとわかってきます。自分をひざに乗せ、なで、話しかけ、歌ってくれたお母さんは、今は赤ちゃんのお世話で忙しく、猫が相手をしてほしくても「待ってね」「後でね」。
ほんの短いお話の間に、様々に揺れ動く猫の気持ちが、ことばと絵で丁寧にすくい取られていきます。抱っこしてほしいけれど、してもらえない残念な気持ち。大好きなお母さんのおひざにいる赤ちゃんへのやきもち。そこから、赤ちゃんの甘い匂いへの気づき。気持ちがやわらぐことで、「私もう大きいから」という我慢が生まれ、後ででいいから抱っこしてという、いじらしい甘えへとつながるのです。
何よりこの絵本のあたたかい雰囲気を支えているのは、猫の気持ちと小さな成長を見逃さない作者達の目線です。同じ目線を共有して、猫のいじらしい気持ちを知っている読み手は、最後にお母さんに抱っこされて、どんなにかほっとすることでしょう。
猫の気持ちと、下の子が生まれた時の上の子どもの気持ちを、重ねて読む方も多いようです。この絵本を読んでから「抱っこして」と素直に言えるようになったというお子さんもいるのでは。子どもは自分がどう感じていたのかを教えてくれるように思え、また親は上の子の気持ちを理解するきっかけになる絵本なのかもしれません。
<ミーテ会員さんのお声>
『ねえだっこして』は、私が選んで借りたもの。上の子が我慢してる絵本はいっぱいあるけど、猫とは! ペットもそう思うのかなあ? そして娘にも、上の子が赤ちゃんにやきもち焼いたり、我慢したりする内容より直接的ではないのでよいかもと思って借りました。普段は感想を話す時もあるけど、今回は身動きひとつせず、じーっと、真剣に聞いていました。きっと何か思うところがあったのだろうなぁ~。何も言わなかったけれどね。読んだ後抱っこしてあげました。(5か月と4歳1か月の女の子のママ)
作の竹下文子さんは、児童書の「黒ねこサンゴロウ」シリーズでも知られる愛猫家の作家さん。改めて絵本を見直してみると、手の届くところに猫の遊び道具があり、猫用の座布団も日当たりのいい家の場所に置かれていて、この家族も猫を大事にしていることが伝わってきます。猫を家族の一員として大切にする作家さんだからこそ、生まれたお話かもしれませんね。
▼竹下文子さんのインタビューはこちら
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▼田中清代さんのインタビューはこちら
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