イチ押し絵本情報

見返りを求めない、究極の愛を描く(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.79)

2016年5月5日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 見返りを求めない、究極の愛を描く

今回ご紹介するのは、シェル・シルヴァスタインさんの絵本『おおきな木』。38か国、900万部超の世界的ベストセラーです。日本では、1976年に本田錦一郎さんの訳で篠崎書林から出版されましたが、出版社の廃業や翻訳者の物故といった事情により、2010年からは村上春樹さんの新訳で、あすなろ書房より出版されています。

りんごの木は、ひとりの少年のことが大好きでした。少年は木登りをして遊び、りんごの実を食べ、くたびれると木陰で眠ります。それを見守る木も、とても幸せでした。やがて、少年は成長し、都合のよいときだけ木を頼ってくるようになりますが、木は無償の愛を注ぎ続けます。そして…。

見開き

原題は『THE GIVING TREE』、直訳すると「与える木」です。木は愛する少年のためにどんな要求にも応え、身を削りながら与え続けます。見返りを求めない、究極の愛。原文では木が「she(彼女)」と記されているため、この木は母親を象徴しているのではないかと連想させます。読み手が子育て中の女性だったらなおのこと、そのように捉えて感情移入することでしょう。


愛のままに少年に与え続けた木は、本当に幸せだったのでしょうか。そして、ただ欲望のままに要求し、要望通り与えられ続けた少年の方は、どうだったのでしょうか。じっくり読み込んで考察していくと、無償の愛は美しい、とも言い切れないのかも…と、複雑な気持ちになってきます。シンプルながら奥深いストーリーが魅力の一冊です。

<ミーテ会員さんのお声>
寝る前の読み聞かせ。少し難しいけれど『おおきな木』を読んでみた。読んでいる私が感情移入して泣きそうに…娘は横でじっと聞いてた。大人になって、出産して読んでみると、また違った感じに思えてくる。娘にも何度も読んでほしい一冊だなぁ。(1歳2か月の女の子のママ)

どちらかというと大人向けという印象が強い絵本ですが、子ども時代に読み聞かせしてもらって、青年期にまた出会って、さらには親になってから子どもと一緒に読んで…と、人生の節目節目で読み返すと、そのたびに異なる味わいを感じさせるはず。本棚にそっとしのばせておきたい名作です。


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