Vol.55 『つみき』作者・平田利之さんインタビュー
赤ちゃんとの絵本の時間を楽しみたい、すべての方へ。選りすぐりの赤ちゃん絵本の誕生秘話や、作家さん・編集者さんが絵本に込めた思いを伺いました。赤ちゃん絵本を楽しむヒントが詰まったインタビュー、今回は平田利之さんにご登場いただきます。
『つみき』は、私が初めて依頼を受けて取り組んだ絵本です。中川ひろたかさんからは、見開きごとの原稿をいただいただけで、そのシンプルさに驚きました。絵に対する注文は特になかったと思います。画面構成を任せていただいたのはうれしかったです。
普段はイラストレーションの仕事がメインで、その内容は、経済や社会全般の問題を扱うなど、大人向けで理屈として難しいテーマのものが多く、それを頓智をきかせて表現しています。なので自分の絵が赤ちゃんにわかってもらえるか、という不安がありました。実際、制作過程で編集者さんから「この表現は赤ちゃんには理解できない」と指摘されたこともありました。
ただ、テーマをできるだけシンプルに表現する、というのが自分のスタイルでもあり、与えられたテーマで制作するという点ではイラストレーションとも共通するものがあるので、そこでうまくはまれば、という思いで制作しました。
赤ちゃん向けということで特に意識したのは、色と形のシンプルさ、表現のわかりやすさ。自分では、つみきの擬人化が気に入っています。その後も中川さんの文章で、『ことり』、『たまご』、『ひよこ』と計4冊の赤ちゃん絵本を手がけました。どれも絵だけでなく、書体の選定や刷り色に特色インクを使うなど、ブックデザインも合わせて担当させていただいています。
Baby Kumonのよみきかせえほん『ぼくのぼうし』は、絵もことばも担当した初めての絵本です。モチーフとして『ぼうし』を選んだのは、絵の展開として面白くなりそうな直感が働いたからです。
「ぼく」が「ぼうし」を被ると、次々に「ぼうし」を被った動物達が入れ子のようなイメージで現れます。最後は「ぼく」が「ぼうし」になって…。ちょっと不思議なお話ですが、お気に入りの「ぼうし」を被る「ぼく」のワクワク感をことばと絵のリズム、ページをめくる効果を意識して表現しました。中川ひろたかさんとの4冊の赤ちゃん絵本制作の経験がなければ、つくれなかったと思います。
私には娘がひとりいますが、彼女の乳幼児期はイラストレーターとして駆け出しの頃で、モーレツに忙しく、恥ずかしながら絵本の読み聞かせをした記憶がほとんどありません。もっと家族との時間をつくるべきだったと反省しています。
赤ちゃん絵本は親子のコミュニケーションツールだと思います。赤ちゃんと一緒に「遊ぶ」感覚で、読み聞かせを楽しんでいただければうれしいです。
平田利之さんが絵を描かれた絵本『ひよこ』に直筆サインを入れていただきました! ミーテ会員3名様に抽選でプレゼントします。
プレゼントの応募は締め切りました。当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
平田 利之(ひらた としゆき)
1967年、東京生まれ。武蔵野美術大学短期大学部専攻科修了。デザイン会社に5年間勤務し、1995年に退職後、フリーデザイナーを経て、イラストレーターとして仕事を始める。雑誌、書籍、広告を中心に活動中。絵本の仕事に『つみき』『ことり』『たまご』『ひよこ』(文・中川ひろたか、金の星社)、『やじるし』『じてんしゃ のれるかな』(あかね書房)がある。