イチ押し絵本情報

かわいいこぐまの挑戦と見守る親の眼差し(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.273)

2020年2月20日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 かわいいこぐまの挑戦と見守る親の眼差し

今回ご紹介するのは、アメリカ人作家ドロシー・マリノさんの絵本『くんちゃんのだいりょこう』です。原書は1961年初版の『BUZZY BEAR GOES SOUTH』。日本では1977年に石井桃子さんの翻訳で出版されました。現在刊行されているのは、1986年初版の大型版です。

冬ごもりの季節になりました。渡り鳥の話を聞いて、自分も南の国へ行きたいと思ったこぐまのくんちゃん。丘の上の松の木を目印に覚えることを約束して、鳥達を追って丘を駆け上りますが、お母さんにさようならのキスをしてこなかったことに気づき、丘を駆け下ります。そしてキスをすると、また丘を駆け上って…。さて、くんちゃんは本当に南の国に行くのでしょうか。

見開き

くんちゃんはその後、南の国に飛んでいく鳥を見るために双眼鏡を取りに戻り、また丘に駆け上がると、今度は釣り竿を取りに家に帰ります。そして今度は、丘の上で喉が渇いて、水筒を取りに戻り、また丘を駆け上がって…。こんなことを何度もくり返した挙句、最後は丘を駆け上がる元気もなくなって、家に寝に帰るのです。そう、くんちゃんは、大旅行どころか結局そのまま冬眠してしまうのです!

読み聞かせしてもらう子ども達は最初、南の国への冒険が始まるのではとワクワクするかもしれません。でも途中で「おや?」と気づきます。「くんちゃん、丘の上と家とを往復しているだけで、全然その先に進めていないじゃない!」と。でも、何度も行き来するくんちゃんの一生懸命な様子がとても愛らしく、思わず微笑んでしまうことでしょう。

そして、読み聞かせをしている大人は、くんちゃんをあたたかく見守るお父さんとお母さんにも心惹かれるのではないでしょうか。ふたりの子育ては、日曜日の朝の騒動を描いた『おでかけのまえに』のあやこのお父さんやお母さんとも共通する大らかさを感じさせます。どんな無謀と思われる挑戦だって、やってみなければわからないこともあります。結果的に失敗したって、そこから学ぶこともあるはずです。くんちゃんはこんなお父さんとお母さんのもとで、これからものびのびと育っていくのでしょう。

<ミーテ会員さんのお声>
忘れ物と言いつつ、やっぱり家を離れるのが寂しいんだよね。うちの子もいつか自分ひとりでどこかへ旅に行きたいと言いだすのかなあ。でも、ちゃんと家に帰って来てほしいなあ。(4歳0か月の男の子のママ)

「こぐまのくんちゃん」シリーズは他にも『くんちゃんとふゆのパーティー』『くんちゃんのはじめてのがっこう』『くんちゃんのもりのキャンプ』などの続編がペンギン社から出版されています。愛らしいくんちゃんの姿、絵本を手に取ってお確かめください。


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