イチ押し絵本情報

お出かけの前の失敗も、大らかに見守る(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.238)

2019年6月13日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 お出かけの前の失敗も、大らかに見守る

今回ご紹介する絵本は、筒井頼子さんと林明子さんによる『おでかけのまえに』。 1980年に月刊誌「年少版こどものとも」に掲載され、1981年に出版されたロングセラーです。

今日は楽しいピクニック。出発が待ちきれないあやこは、お弁当をつめようとしてぐちゃぐちゃにしたり、カバンに無理やり荷物を詰めこんで壊してしまったり。いつになったらお出かけできるかな?

見開き

「日曜日です。あやこは飛び起きて、ぱっと窓のカーテンを開けました」。お話は簡潔な文章から始まります。ですが、お話を耳で聞き、絵を読む子ども達は、あやこが今日のピクニックをどれだけ楽しみにしていたかをはっきりと理解します。窓につるされたてるてる坊主、ベッドの中に持ちこんだリュック。自分の経験と重ねて、ワクワクした気持ちを共有する子もいるでしょう。

 

起きてみると、食卓にはお弁当の料理が並び、大きなカバンが用意されていて、家の中はいつもとは違う様子。お母さんもお父さんも慌ただしく準備に追われています。気持ちが浮き立つあやこは、お手伝いをしようと思い立ちます。 お母さんがいつもやっていることはわかっています。お料理をお弁当箱につめればいいのです。お父さんのカバンを開けっぱなしだから閉めてあげます。結果は…読み手の想像通りの事態に。

その後も、ごく普通の親なら「忙しい時に限って余計なことを…」と、お小言のひとつも言いたくなるような失敗を重ねます。ここで、あやこのお母さんは「まあ!」と驚くのみ。お父さんも「おやおや」と悠揚迫らぬ余裕の対応。ピクニック前の子どもらしいはずむ気持ちを、大らかに受け止めています。『はじめてのおつかい』など他の作品にも共通する、作者ふたりの子どもへのあたたかい眼差しを感じるシーンです。

子ども達がこの絵本を何度も読んでもらいたがる最大の理由は、最終ページと裏表紙の2枚にあるでしょう。いくつも失敗はするものの、あやこは無事お母さんとお父さんと一緒にピクニックに出かけ、楽しい一日を過ごしたことがわかります。子ども達は自分のことのように喜び、安心して「もう1回」と言うのです。

ごく普通の家族の、ごく普通の休みの日の、しかも出かける前を描いた作品です。特筆すべき事件はまったく起きません。そんな「ごく普通の日常」のかけがえのなさを改めて感じさせてくれるからこそ、多くの人の心に残る物語となっているのでしょう。

<ミーテ会員さんのお声>
最近、娘が『おでかけのまえに』をよく持ってくる。でも私は、内心ヒヤヒヤ。娘が主人公の女の子のマネをしだしたらどうしよう。だって、ママが怒りたくなるポイント満載だからね。先日読んだ育児書に、絵本の中には子ども本来の姿が描かれていて、それが時に大人からしたら困った行動であったりする、と書いてあった。その通りだわ…。『おでかけのまえに』では子どもの行為を周りがあたたかく見守っている。私も、娘の子どもらしい姿を受け止められるママでいたいな。(2歳5か月の女の子のママ)

筒井さんと林さんは、『はじめてのおつかい』以来の名コンビ。以前ロングセラー&名作ピックアップでも紹介しているので、ぜひのぞいてみてくださいね。


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