毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、石津ちひろさんが文、山村浩二さんが絵を手がけた『くだもの だもの』。2006年に出版された人気作です。
「かいすいよくには いかない スイカ」「キウイ うきうき うきわで およぐ」「ビワの おわびは おわらない」。海水浴に来たユーモラスなくだもの達の、愉快で楽しいことば遊びの絵本です。
表紙と背表紙には、リアルに描かれたくだものに、シンプルな顔と手足がついたキャラクター達が並んでいます。くだものはスーパーに年中あるものから、旬にしか見かけないもの、あまりなじみのないトロピカルフルーツまでがずらり。
山村浩二さんが「形や質感をよりリアルにするために、実物を見ながら描いた」とミーテカフェインタビューでおっしゃった通り、ミカンの皮のツヤやキウイの毛などを見ても、くだものの描写はとても写実的です。対照的に顔と手足はいたずら描きのよう。その軽いタッチに、ふと、スーパーに並んだ本物のくだものが、私達が目をそらせた瞬間に、かわいらしい顔と手足をのぞかせて動き出したのかも…そんな想像がふくらみます。
「くだもの だもの」というタイトルからわかるように、ことばの響きを楽しむ、ことば遊びの絵本です。文章は、「スイカ」「キウイ」ということばを口の中で転がすうちに、意味の通じる文が飛び出してきたようで、軽みと遊び心にあふれています。リズム感がよく、難しいことばが使われていないこともあり、小さい子ども達も、覚えて口ずさむことでしょう。
山村さんはインタビューの中で、絵本を製作した際に、まず石津ちひろさんから「実際に本文に使われている以上の数のテキストが、順番も決まっていない状態でリストになって」届いたと明かしています。そこから「海水浴」ということばをキーワードに、山村さんが文章の並び順を決め、ひとつのお話へ構成したことで、「海水浴にきているくだもの」というゆるやかなストーリーが生まれたそうです。
もうひとつこの絵本の魅力は、テキストに描かれていないくだもの達のサイドストーリー。あちこちに現れるマンゴーの祖父と孫のペアや、次のシーンを予告するようなビワのコミカルな動き、最初と最後だけに登場するスイカなど、それぞれに物語があります。雄弁な絵によって、1行の文章の背後に物語を想像する余地が生まれているのです。それこそが、もう一度読みたいと思わせる大きな理由なのかもしれません。
<ミーテ会員さんのお声>
上の子のために借りた『くだもの だもの』を、下の子がとにかく大好きになりました。いくつか並べておいても必ず選ぶし、読み終わると最初のページに戻してもう1回とリクエスト。ことばのリズムが耳に心地よいようで、時々「ふふふ~」と笑いながら聞いてくれます。
そして今日の午後、下の子と昼寝をしていたら、「パパイヤの パパ パン やいた…」と聞こえてきました。上の子が、絵本を「ひとり読み」していました。まだひらがなはほとんど読めないので、完全に暗唱です。びっくり。兄弟両方のお気に入りになった絵本は初めてだなぁ。(1歳3か月,3歳3か月の男の子のママ)
『くだもの だもの』と、『おやおや、おやさい』、 『おかしな おかし』の3冊が姉妹本になっています。いずれ劣らぬユーモラスな食べ物達の競演。どれか1冊が気に入った方は、ぜひ他の絵本も読んでみてくださいね。
▼石津ちひろさんのインタビューはこちら
「絵本で楽しもう 親子のコミュニケーション」
▼山村浩二さんのインタビューはこちら
「さまざまな絵本に触れて 子どもの感性を育もう」
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