毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、モーリス・センダックさんによる『まよなかのだいどころ』。1970年に米国で出版され、1982年に じんぐうてるおさんの翻訳で日本に紹介されたロングセラーです。
真夜中に騒がしい音がするので、ミッキーが「うるさいぞ!」とどなると、突然、体が宙に浮き、降りたったところは、真夜中の台所。そこではパン屋さんが毎晩ケーキをつくっていましたが…。
夜自分が寝ている間に、世界ではどんなことが起きているのだろう。子どもの頃、こんな風に思ったことはありませんでしたか? ミッキーがベッドに入ると、騒がしい音が聞こえてきます。気になって眠るどころではありません。
音の出どころは、パン屋さんの台所でした。三つ子のようにそっくりな3人のコックが、朝、パン屋に並んでいるケーキを夜な夜な焼いていたのです。「しあげはミルク! しあげはミルク!」とリズミカルに歌いながら生地を混ぜていきますが、生地に「ミルク」ではなく「ミッキー」を入れてしまったままオーブンへ。
センダックさんの絵本の主人公は、ここで黙ってケーキと共に焼かれてしまうなんてことはありません。しっかり自己主張して難を逃れると、「ミルクがないと、朝のケーキがつくれない!」というコックのために、パン生地でつくった飛行機に乗って、台所にある天の川(英語でMilky Way)までミルクをとりに行く冒険をやりとげます。そして、夜の間の秘密をひとつ知ったミッキーは、穏やかな眠りにつくのです。
夢と現実の境目があいまいになっているところは、センダックさんの代表作『かいじゅうたちのいるところ』と同様ですが、今作はより楽しい雰囲気になっています。
くっきりとした描線、コマ割りされたページ、セリフが吹き出しに入っているなど、随所に漫画の手法が取り入れられていることも理由のひとつでしょう。また、背景のニューヨークのような街並みは、小麦粉の袋やジャムの瓶、コルク抜きなど、さまざまな台所の雑貨でできています。背景だけでも見飽きない面白さがあります。
そして、リズミカルなことば。特にコックのセリフは語感がよく、歌うように読み聞かせればより楽しさが伝わることでしょう。原文は韻を踏むなど独特のリズムで書かれているので、興味がある方は英語版の『In the Night Kitchen』も一度覗いてみてはいかがでしょうか?
<ミーテ会員さんのお声>
長男が2~3歳の頃、近くの子育て支援センターで、毎回棚から自分で持ってきては読んでとせがんでいた絵本。今日、本屋でなぜか思い出し「あの絵本なんだっけ。あれ、一番大好きだったんだ」といった。好きなのはわかっていたけど、7歳の今になっても思い出して言うほどだとは思わなかった。一生懸命読んだママとしてもうれしいわ。下の子もきっと読むでしょうと思い、買って帰りました。(6か月と7歳4か月の男の子、9歳7か月の女の子のママ)
80作以上を超えるセンダックさんの作品の中でも、代表的な3部作として知られているのは『かいじゅうたちのいるところ』と今作、そして『父さんがかえる日まで』です。以前『まどのそとのそのまたむこう』というタイトルで出版されていたものが、先日、アーサー・ビナードさんの新訳で登場しました。不思議で謎めいた美しい絵本ですよ。
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