イチ押し絵本情報

「ぶたのたね」こりずにまき続けるおおかみ(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.250)

2019年9月5日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 「ぶたのたね」こりずにまき続けるおおかみ

今回ご紹介する絵本は、佐々木マキさんによる『ぶたのたね』。1989年に絵本館から出版された人気シリーズの第一作です。

ぶたよりも足が遅いおおかみ。何とかぶたを食べたいと、きつね博士に相談すると、博士は「ぶたのたね」をくれました。さっそく、まいて育てると、木の枝に実ったのは…。

見開き

「走るのがとてもおそいおおかみがいた。どんなに遅いかというと、ぶたよりも遅い」。さらっと書かれた冒頭の文。ですが、のっけから『三びきのこぶた』などの昔話によくある「おおかみはぶたを食べる悪者」というセオリーがひっくり返されています。食べられるはずのぶたよりも足が遅くては、捕まえられず、食べられません。この設定のおかげで、これまで野菜と木の実しか食べたことがない、世にもまれで、ちょっとお気の毒なおおかみが誕生するのです。

 

おおかみは、それでもぶたの丸焼きを食べたくてぶたを追いかけますが、笑いながら逃げられる始末。そこに謎のきつね博士が現れて、「ぶたのたね」をくれます。ぶたの木が生えてぶたの実がなるので「好きなだけぶたが食べられますぞ」と言うのです。おおかみは半信半疑。お話を聞く子ども達は1信9疑くらいでしょう。

ところが、本当にぶたが木にたわわに実るのです! まるで果物かのように、まるまると太ったぶたがぶらぶらと木からぶら下がっています。びっくり仰天、シュールな絵面に、子どもは大爆笑、大人もあまりの突拍子のなさに手放しで笑ってしまうはず。

そこからラストまでは、理不尽な展開がたたみかけます。脈絡なくマラソン大会中のぞうが通過し、落ちたぶたの実達は走り去ります。最後の一匹もおおかみの間の抜けた対応で逃げてしまい、残ったのはしょぼくれたおおかみだけ。子ども達はおなかを抱えて大笑い。

そしてひとしきり笑った後、ふと、このおおかみがぶたを食べられないのは足が遅いからだけではないな…と思いが至って、また笑いがこみあげてきます。たたみかけるドタバタに大爆笑し、おおかみのとぼけた姿にニヤニヤ。何重にも笑いの罠がしかけられた絵本なのです。

佐々木マキさんは、もともと漫画家で、村上春樹さんの小説の装画でも知られています。絵本デビュー作は、『やっぱりおおかみ』。主人公は何を見ても「け」とだけ言う真っ黒で孤独なおおかみ。一方、今作に登場するおおかみは、設定にこそほんのりと悲しみを漂わせていますが、何よりこりない・めげない楽天性があります。このカラッとした性格こそが、佐々木さんの作品の中でも人気が高い理由のひとつなのでしょう。

<ミーテ会員さんのお声>
親子で『ぶたのたね』が気に入ってます。ユニークさ、突出してます。こんなにツボに入る絵本は初めてです。娘は寝る前に「きつねはかせ、だーいすき」と呟いてました。お母さんはトホホなおおかみさんが好きよ。同じ佐々木マキさんの『まじょのかんづめ』も借りてみました。こちらはやや文章量が多いので娘は理解していないようでしたが、絵は好きみたいでしげしげと眺めています。(2歳5か月の女の子のママ)

シリーズは『また ぶたのたね』『またまた ぶたのたね』と、先日新刊情報でもご紹介した『あやしいぶたのたね』の4冊。まだまだおおかみは、ぶたの丸焼きのために、ぶたのたねをまいています。結果は…。それでもめげないおおかみの姿に思わず応援したくなっちゃうかも!


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