毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介するのは、松成真理子さんの人気作『じいじのさくら山』。雑誌「月刊MOE」2004年4月号の掲載作に描きおろしの原稿を加え、再構成した上で、2005年に出版された絵本です。
春になると山桜が山を彩ります。そんな「さくら山」をつくったのは、うれしいことがあるたびに、山に桜を植えてきたじいじでした。ちびすけは、そんなじいじと一緒に山へ行くのが大好き。ところがある日、じいじが病気になって…。
桜とおじいさん、という組み合わせですぐに思い浮かぶのは、花咲かじいさんかもしれませんが、この絵本に出てくるじいじは、まさに花咲かじいさんのような存在です。なぜなら、山いっぱいに桜を植えて、さくら山を守ってきた人だから。じいじは孫に「ちびすけ」と声をかけ、「さくら みにいこう」と呼びかけます。いつもさくら山を一緒に歩く主人公の男の子は、自分のことを一丁前に「おれ」と呼びますが、じいじと手をつないだり、ひざの上に座ったりする無邪気さを見る限り、5歳くらいの子どものように思われます。
桜の木や山のことだけでなく、草や花や虫のことなど何でも知っているじいじを、男の子は尊敬しています。「じいじは すごいな」「なんも なんも」…短くもあたたかいやりとりが、物語の序盤で2度登場します。圧巻は、ふたりが最後に一緒に見た桜のシーン。文字なしで見開きいっぱいに、これでもかと咲き乱れた桜は、「おみごと」としか言いようがありません。
作者の松成真理子さんはミーテカフェインタビューの中で、「絵本を通じて伝えたいのは、一人じゃないよってこと」というお話をされています(インタビュー後編参照)。このお話の主人公の男の子も、毎年見事に桜が咲くのを目にするたびに、じいじのことを思い出すのでしょう。咲き誇る桜とともに、男の子の心の中に、じいじはいつまでも生き続けるのです。祖父と孫とのあたたかな交流に、思わず目頭が熱くなる感動作です。
<ミーテ会員さんのお声>
図書館で娘が「これ読みたかったんだ~!! お母さん、読んで」とこの絵本を持ってきました。私は見たことがない絵本だったので、なぜ知っているのか聞くと、「お母さんの本に載ってて、読みたいと思ってたんだ」とのこと。よくよく聞いてみたら、「月刊MOE」の絵本紹介ページに表紙が載っていたそうです。よく見てるなぁ。娘は絵本の表紙を見るのも好きなようで、絵本紹介冊子や紹介ページをじっくり見るのも大好き。きっとMOEのそのページも記憶するぐらい見たんでしょうね。
絵本は、ほんとにきれいな桜を愛したおじいちゃんの話で、絵がとっても素敵でした。家に帰ってMOEを確認したら確かに載っていました! この本読みたいな~なんて思いながらこういうページを見ているもんなんですね☆(3歳3か月の女の子のママ)
松成真理子さんはたくさんの絵本を手がけていらっしゃいますが、デビュー作である『まいごのどんぐり』もまた「一人じゃないんだ」ということ、そしてその幸せを伝えてくれる、心あたたまる絵本です。季節にあわせて選んでみてはいかがでしょうか。
▼松成真理子さんのインタビューはこちら
「絵本を通じて伝えたいのは、一人じゃないよってこと」
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