毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、荒井良二さんの『あさになったのでまどをあけますよ』。2011年に発行されて以来幅広い層から支持を集めている作品です。
「朝になったので窓を開けますよ」「山はやっぱりそこにいて、木はやっぱりここにいる。だからぼくはここが好き」。山のふもとの集落に暮らす子、人や車が行き交う大きな街の子、鮮やかな熱帯の花々に彩られた海辺に住む子…。それぞれの場所で、子ども達は朝を迎え、新しい一日を始めます。
朝目覚めて、窓を開ける。窓の外には、見慣れた景色。絵本の中の子ども達だけでなく、絵本を読むこちらの私達にとっても、ごく当たり前の日常の中にある行為です。
しかし、窓を開けた子にとっての「普通」の景色は、私達には見慣れない景色。荒井良二さんの筆によって、内側から明るく輝くように描かれた景色の美しさに、まず私達は、旅人の視点をもって気付きます。
続いて、様々な場所に住む子ども達によって、次々と窓が開かれていきます。深い山の濃い緑、活気にあふれたにぎやかな街並み、穏やかに凪ぐ海…。ふとその中に「見たことがある」景色を見つけた時、絵本の見方が変わります。それは故郷の風景、思い出の風景でしょうか。数多くある美しい景色のうちのひとつが、思い出を伴って、特別になる。その時に「だからぼく(わたし)はここが好き」ということばが響いてくるのです。
「この夏、荒井良二さんは、被災地の方々と一緒に取り組むワークショップのために、東北地方沿岸部の町を訪ねる旅を繰り返しました」(偕成社HPより)。荒井さんは、東日本大震災が起きた年に、被災地を何度も訪ねました。そしてワークショップを重ねる中で、この絵本のアイデアが生まれたそうです。実際この絵本は、震災と同じ年に制作されています。
日常のくり返しや、見慣れた風景のもつ力、普段の景色のかけがえのなさ。そんなことに気づかせてくれる一冊です。
<ミーテ会員さんのお声>
窓を開けている子どもを指さして「ここにいるねー」と言っていたら、2回目からは「あった! あった!」と指さしするようになった。絵探しの本として認識したらしい。「ウォーリーをさがせ!」みたい(笑) 子どもがいるページはどこも「あった!」と指差し。でも人がいないページでも「あった!」という(笑) 指差しはしないけど。何が見えてるんやろう?(1歳6か月の女の子のママ)
朝を描いたこの絵本と対になるかのように、夜を描いた作品が『きょうはそらにまるいつき』。もう少し荒井さんの世界にひたっていたい…と感じたら、ぜひ。
▼荒井良二さんのインタビューはこちら
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