毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、くすのきしげのりさんの代表作『おこだでませんように』。2008年に出版されて以来、「泣ける絵本」として話題を集め、韓国や中国、台湾でも翻訳出版された人気作です。
表紙にどーんと描かれた主人公の男の子の横顔。眉毛はきゅっと吊り上がり、眉間にはしわが寄っています。潤んだ目元、真一文字に結ばれた口。涙を流すまいと必死に堪えているのがわかります。
「妹を泣かして!」「まだ宿題してないの!」
「暴力はいけません!」「もう少し静かにしなさい」
家でも学校でも、毎日のように怒られる男の子。彼にもそれなりに言い分はあるものの、口答えすればさらに怒られると思って、何も言わずただ怒られています。本当は「ええ子」って言われたい。お母さんや先生の笑顔が見たい…。僕はどないしたら、ほめてもらえるのやろ? 男の子はそんな切なる願いを、七夕の短冊に一文字一文字、心を込めてつづります。
泣ける絵本として話題になった理由は、読み聞かせする多くの親が、怒られてばかりの主人公の姿にわが子を重ね合わせ、怒ってばかりの毎日を省みるから。子どもよりもむしろ大人の心にこそ、ぐっと響く絵本です。
<ミーテ会員さんのお声>
読んでいて、主人公の男の子と息子のことが重なり、複雑な気分になりました。短冊に書かれた「おこだでませんように」を見て、とうとう涙腺決壊…。最近特に怒ってばかりの自分と、怒られてばかりの息子が頭の中に浮かび、私はきちんと息子の声を聞いているのだろうか…と反省しました。頭ごなしに叱る前に、ひと呼吸。きちんと話し合える親子関係でいたいですね。(2歳5か月の女の子、5歳8か月の男の子のママ)
タイトルにもなっている「おこだでませんように」は、元・小学校教諭の作者くすのきしげのりさんが実際に見た、短冊に書かれた願いごとだそう。一体どんな思いでこの短冊を書いたんだろう…と思いをはせるところから、このお話が生まれたのでしょう。
独特の味わい深い筆致で、不器用な男の子の頑なな表情や、無邪気に満面の笑みを浮かべる姿を見事に描いたのは、石井聖岳さん。インパクトのある表紙は、目にするたびに「最近また怒りすぎてないかな?」と反省を促すかもしれません。七夕の時期にぜひ読んでみてください。
▼くすのきしげのりさんのインタビューはこちら
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▼石井聖岳さんのインタビューはこちら
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