毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、パット・ハッチンスさんの『ロージーのおさんぽ』。1975年に日本に紹介されたロングセラーです。
メンドリのロージーが、夕食前の散歩に出かけます。その背後には、キツネがピタリ。何も知らないロージーは、田園風景の中をのんびりと歩き続けます。果たしてロージーとキツネはどうなるのでしょう? 緊張とユーモアが織りなすドラマを、絵が語る絵本。
文章は、必要最小限しか書かれていません。ロージーが庭を行き、池をまわり、干し草の山を越えて散歩する様子を語るのみ。しかし絵を見れば、ロージーの後ろにはごちそう(=ロージー)を前にニヤつくキツネの姿。しっかり距離を詰めて、後は飛びかかるだけ。「ロージー、後ろ!」と思わず声が出てしまう緊張のシーンからページをめくると…。キツネはコントのように障害にことごとくひっかかり、最後はしっぽを巻いて逃げ去ります。これらのシーンには説明文は一切ありません。
「絵が語る絵本」。この絵本を語るうえで、これ以上でもこれ以下でもないことばがすでに、巻末に書かれています。書き手は訳者の渡辺茂男さん。『しょうぼうじどうしゃじぷた』の作者で、『エルマーのぼうけん』の訳者でもあります。読み聞かせを聞く子達は、説明が少ない分、集中して絵を観察します。すると、絵は物語を語り始めるのです。読み聞かせの醍醐味を存分に味わえる絵本と言えるでしょう。
キツネとメンドリは食うものと食われるものという暗黙の了解があり、それがひっくり返されるところにお話の面白さがあると、私達大人は思いますし、実際にそうでしょう。本の推奨年齢も3歳からとなっています。しかし本の情報ページの年齢別グラフを見ると、こちらの想像と違い、2歳以下の子どもにも人気が高いことがわかります。誇張されたキツネのユーモラスで情けない姿、とぼけたような図太いようなロージーの表情。小さい子達は、そんな絵をしっかりと読み、対象年齢をものともせず、お気に入りの一冊にしていくのでしょう。
絵本作家・いちかわけいこさんは絵本『おばけかな?』をつくる際に、『ロージーのおさんぽ』の「主人公は分かっていないけれど、読者は分かっているという二重構造」を意識してつくられたそう。日本に紹介されて40年以上の月日が流れていますが、いまだに作家さん達の創作意欲をかき立てる、ユニークで個性的な名作と言えるでしょう(※『おばけかな?』は、インタビューの後編に掲載)。
<ミーテ会員さんのお声>
今日一番は『ロージーのおさんぽ』。文字で書いてあることだけでなく、絵を読み解く必要がある本なので、娘にはまだ難しいと思っていました。しかし、キツネが鍬にぶつかったり、池に落ちたりする、文章のないページで声を出して笑って、面白そうな表情をこちらにむけました。私は文字がないから何も読まなかったし、解説もしていなかったのです。子どもはちゃんと絵を見て楽しんで、内容を理解しているんですね。すごい! こういうことは絵本を読み聞かせていなかったら絶対に気がつかなかったと思います。(1歳3か月の女の子のママ)
ハッチンスさんの作品は他に、『ティッチ』のシリーズや『ベーコン わすれちゃ だめよ!』など。いずれも独特なユーモアのセンスが光る作品です。
無料会員登録後は、過去の「絵本子育て相談室」など、
様々な絵本情報が読み放題!
ぜひミーテにご登録ください♪