絵本作家インタビュー

vol.15 絵本作家 かとうようこさん(後編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回ご登場いただくのは、ミーテでくまのキャラクターなどのイラストをご担当いただいている絵本作家・かとうようこさんです。ミーテ会員のみなさんとのコラボレーション企画「絵本おはなしリレー」でもおなじみのかとうさんに、絵本作家になるまでの紆余曲折や、絵本づくりにおけるこだわりなどを語っていただきました。
今回は【後編】をお届けします。(←【前編】はこちら

絵本作家・かとう ようこさん

かとう ようこ

絵本作家。詩と絵で綴る大人向けの「心の絵本」から、絵本の世界へ入り、児童書の創作活動へ。主な作品に『みんなでんしゃ』『ぎゅうぎゅうでんしゃ』『ないしょでんしゃ』(以上、文・薫 くみこ、ひさかたチャイルド)、『みてみて!』(ポプラ社)、『びゅーん』(WAVE出版)、『チェリーひめのかくれんぼ』(教育画劇)などがある。
ホームページ「かとうようこ時間のびんづめ」:http://katoyoko.net/

何度見ても発見がある絵本をつくりたい

絵本作家・かとう ようこさん

絵本の絵を描くときは、どんな感じに描くか決まるまでに時間がかかりますね。決まってしまえば早いんですけど。メモを持って出かけて外で考えたりすることもあります。どうやったらいい感じになるのか悩むのは苦しいことではありますが、逆に楽しいことでもあるんです。できあがったあと、メモや最初に描いた絵とかと見比べて、よくここまでできたもんだなと自分で感心したりすることもありますよ。

絵本は読み聞かせ会などで大勢の前で見せることもあれば、お母さんのひざの上で読んで聞かせることもあるでしょう。それから、子どもが一人でじっくり見て楽しむこともあります。どの場合でも楽しんでもらいたいので、遠くから見ても近くで見ても楽しめて、何度見ても発見がある、そんな絵本になるようにと考えてつくっています。

具体的には、遠くから見てもわかりやすい全体の構図とか、近くで見たときにただ勢いよくぱーっとめくっても変化があって楽しい色使いとか。一人でじーっと見てても、このぶたさんはこのあとどうするかなって子どもが勝手にお話をつくりながら遊べたり、さっき前のページでこうしてた人がこのページではこうしてる、と発見したりするような、いろんな要素を散りばめた絵本がいいなと。読者の方からの反応で「何度も読みました」っていうのは、やっぱりすごくうれしいですね。

絵本は“幸せの貯金箱”

ふらふらみつばち

▲楽しい仕掛けいっぱいの絵本『ふらふらみつばち』(ひさかたチャイルド)

絵本は“幸せの貯金箱”だと思うんです。楽しくて幸せな時間ってすぐに過ぎてしまって、とっておくことはできないですけど、そういう時間はちゃんと絵本の中に貯まっていきます。そして大人になったとき、貯金となって返ってくるんです。つらいことがあっても、幸せの貯金がたくさんあればあるほど、元気になれるし、次に進んでいくことができます。絵本を開けば、いつでもそのときの幸せな気持ちに戻れるんです。

これは子どもにとってだけではなくて、読み手であるお母さんやお父さんにとっても同じ。絵本の読み聞かせをする中で、子どもとの幸せな時間がたくさん貯まっていきます。だから、絵本を読むときはぜひ、“読んであげる”のではなくて、子どもと一緒にその絵本の世界に入り込んで、存分に楽しんでもらえるといいなって思います。子育て中の妹からは、「『ふらふらみつばち』を何度も読まされて、もうふらふらだよ」なんてことも聞いてるんで(笑)、実際は読み聞かせを続けるのも大変なんだと思いますが、ふらふらにならない程度に、一緒に絵本の世界で遊んでほしいですね。

私たちも、自分の思いやそれまで生きてきて感じたことの結晶を作品に仕上げるので、つくり手にとっても絵本は幸せの貯金箱だと思っています。

かけがえのない時間を大切に

絵本作家・かとう ようこさん

絵本を読み聞かせてくれたということだけでなく、歌を歌ってくれたとか、お話をしてくれたとか、セーターを編んでくれたとか、そういうことが全部、子どもにとっては大事な宝物のようなことだと思うんです。私の甥っ子も、おばあちゃんがつくったてるてる坊主をものすごく大事にしてたりするんですよ。大人はそこまで大事と思わずにやってることも多いと思うんですけどね。一緒に散歩に行って川の中を覗いたとか、ちょっとしたことも子どもはよく覚えてます。だから大人も、子どもとのそういうかけがえのない時間を大切に過ごしていきたいですよね。

今後は、今まで温めてきたアイデアや描き貯めた絵など、ダイヤモンドの原石みたいなものを、どんな形にしようかなと自分でも楽しみにしています。同じ原石でも、表現の仕方によっては幼稚園の子が読むようなお話にもできれば、大人向けの小説にもなるし、映画にもなるし、ファンタジーにもなりますから。自分ならどんな形にできるかなといろいろ考えるのが、楽しいですね。


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