vol.51 「おかあさんといっしょ」初代体操のお姉さん・秋元杏月さんの推し絵本
思い出の一冊、大好きな一冊、渾身の一冊など、とっておきの“推し絵本”を紹介してもらうインタビュー「みんなの推し絵本!」。今回はNHK Eテレ「おかあさんといっしょ」で、初代体操のお姉さんとして活躍された秋元杏月さんです。子どもたちに元気を届け続けてきた秋元さんの心に残る絵本や、大人になって改めて感じた絵本の魅力について伺いました。
子どもの頃の私はとても引っ込み思案で、内弁慶な性格でした。幼稚園では運動も得意ではなくて、ひとりで泥だんごをつくるのが大好きでした。先生から、「杏月ちゃんは泥だんごの名人だね」と言われたことがうれしくて、毎日のように夢中になってつくっていたのを覚えています。
外では恥ずかしがり屋でしたが、母の話によると、家ではオリジナルの歌を歌ったり、踊ったりしていたそうです。自分ではあまり覚えていないのですが、きっと家の中では自分だけの世界を思いきり楽しんでいたのだと思います。
そんなこともあって、実は私は、小さい頃にたくさん絵本を読んで育ったタイプではありません。家にあったのは『となりのトトロ』や『千と千尋の神隠し』のアニメ絵本くらいで、あとは幼稚園で先生に読んでもらった絵本の記憶が少し残っている程度でした。
それでも大人になって本屋さんで絵本を手に取ると、「あ、この絵本覚えてる!」と思うことが意外とたくさんあります。とくに印象に残っているのが『三びきのやぎのがらがらどん』です。
とにかく絵に迫力があってドキドキしたという記憶があったのですが、大人になって読み返すと、物語の力強さに気づかされました。子どもの頃は絵を見て楽しんでいたのに、大人になると言葉や物語の意味が心に入ってくる…そんな絵本の魅力を、改めて感じました。
もう一冊、印象に残っているのが『にじいろのさかな』です。キラキラした魚の絵が大好きで、そのイメージが心の奥にずっと残っていました。大人になって読み返してみると、昔読んだときには気づかなかった奥深さやメッセージがたくさんあって驚きました。「こういう気持ちを忘れたくないな」そんなふうに思わせてくれる絵本です。
「おかあさんといっしょ」で過ごした7年間は、私自身が子どもたちから学ぶ時間でもありました。収録前には大人だけでリハーサルをするのですが、本番になると、子どもたちは私たちには思いつかないような答えや発想をたくさん見せてくれます。「そんな考え方があったんだ」と驚かされることばかりでした。子どもたちの頭の柔らかさや豊かな想像力に、私自身もたくさん刺激を受けてきました。
大人になった今、また読みたい絵本として思い浮かぶのは『こんとあき』です。子どもの頃に読んだ作品ではないのですが、大人になって読んで大好きになりました。こんとあきの冒険を見守りながら、気づくと私はあきのお母さんのような気持ちで読んでいるんです。「大丈夫かな」と少しハラハラしながら、それでも読み終わると心があたたかくなる。疲れたときに読み返したくなる、大切な一冊です。
子育て中のご家庭では、寝る前の読み聞かせをされている方も多いと思います。子どもは内容をすべて理解していないように見えても、実はちゃんと心に残っているんじゃないかなと思います。私自身も、物語の細かい内容は覚えていなくても、絵やそのときの気持ちは今でも残っています。
そして大人になって読み返したとき、また違う気持ちでその絵本と出合える。それが絵本のすてきなところだと思います。親子で過ごす読み聞かせの時間が、あたたかい思い出として残っていきますように。私自身も、これからもっと絵本に触れて、心を浄化していきたいと思っています。
秋元 杏月(あきもと あづき)
愛知県出身。8歳から新体操に打ち込み、10年の競技歴をもつ。2019年からNHK Eテレ「おかあさんといっしょ」番組史上初となる初代体操のお姉さんとして7年間活躍し、多くの親子に親しまれた。2026年3月に番組を卒業後も、子どもたちに寄り添いながら、身体を動かす楽しさや表現する喜びを、舞台などで届け続けている。