イチ押し絵本情報

旅の経験が成長への大きな一歩に(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.93)

2016年8月11日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 旅の経験が成長への大きな一歩に

今回ご紹介する絵本は、林明子さんの『こんとあき』。1989年初版の人気作です。

生まれてくる赤ちゃんのおもり役として“さきゅうまち”からやってきた、キツネのぬいぐるみ「こん」。赤ちゃんは「あき」と名付けられ、だんだん大きくなりました。その一方でこんはだんだん古くなり、とうとうある日、腕がほころびてしまいます。こんとあきは、ほころびた腕を直してもらうために、汽車に乗っておばあちゃんの住む“さきゅうまち”に向かいますが…。

見開き

大人の付き添いなしの旅というのは、子どもにはワクワク、ドキドキ、ハラハラの大冒険です。あきも、こんとふたりだけで乗る汽車にワクワクしたり、初めて見る砂丘に感動したりしますが、その一方で、お弁当を買いに行ったこんが戻ってこなくて不安になったり、砂丘でこんとはぐれて困ってしまったり、日が暮れてきて心細くなったり…と、おばあちゃんのうちにたどり着くまでに様々な体験をします。

喜びや感動、驚き、緊張、不安といった心の動きを、ストーリーの中で非常にバランスよく味わえるところが、子どもにとってこの絵本の何よりの魅力でしょう。ハプニング続きの旅の末たどり着いたのは、おばあちゃんのあたたかい腕の中。そのぬくもりは、絵本を通じて冒険を疑似体験する子どもにも、きっと伝わっているはずです。

あきのことを生まれる前から待っていたこんは、あきにとってはお兄ちゃんやお姉ちゃんのような存在で、旅の中でも「だいじょうぶ だいじょうぶ」とあきを頼もしくリードしてくれます。でも、こんがピンチに見舞われると、立場ががらりと逆転。あきは、それまで自分を励まし支えてくれたこんを何とか助けねばと奮闘します。成長への大きな一歩を踏み出したのです。

体も心もどんどん成長していくあきと、いくら直してもらっても古びて傷んでいくこん。あきはいつか、こんと遊ばなくなるでしょう。こんのことを忘れてしまう日も来るかもしれません。ふたりの絆が強いからこそ、その日のことを思うとなんだか切なくもなりますが、あきはきっとこの先も、こんが教えてくれたやさしさや強さを胸に生きていくのだと思います。読み聞かせする大人の心にもぐっとくる一冊です。

<ミーテ会員さんのお声>
ただ今、息子がはまり中の絵本です。毎日、寝る前に3回は読むかな。こんとあきのやりとりと、電車が出てくるところがたまらないらしい(笑) こんのやさしさとかわいらしさと愛情深さに何度も涙しそうになる、私も大好きな絵本です♪(3歳1か月の男の子のママ)

お話には出てきませんが、こんは亡くなったおじいちゃんの古いコートを使ってつくられているのだと、作者の林明子さんが月刊MOE(2002年10月号)の中で語っておられます。おじいちゃんとおばあちゃんの深い愛情がこんにも受け継がれているのだなと感じさせられるエピソードですね。福音館書店のWEBサイトには、こんの型紙とつくり方を紹介するページがあるので、手芸が好きな方はぜひチャレンジしてみてください♪

▼福音館書店「こんを作ろう」
http://www.fukuinkan.co.jp/ninkimono/kon/


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