vol.40 石井聖岳さんの推し絵本
思い出の一冊、大好きな一冊、渾身の一冊など、とっておきの“推し絵本”を紹介してもらうインタビュー「みんなの推し絵本!」。今回は、人気絵本『おこだでませんように』や『ふってきました』の絵を手がけた絵本作家で、保育士としても活動する石井聖岳さんにご登場いただきます。
子どもの頃は、母がよく図書館に本を借りに行っていたので、一緒についていって、自分も読みたい本を借りて読んでいました。
よく覚えているのは、かこさとしさんの科学の本のシリーズの『よわいかみ つよいかたち』。はがきを切ったり折ったりして、紙の橋をつくるんですけど、どうしたら強度が増すかがわかりやすく説明されています。
あと、五味太郎さんの『きみはしっている』も記憶に残っていますね。明日食べる分の肉を岩かげに隠したコンドルが、ここに隠したことをよく覚えておいて、と読者に投げかけるんです。ちょっと離れた隙に肉がなくなってしまって、犯人探しが始まる…という面白い展開の絵本でした。
僕には今小学4年生の子どもがいますが、子育て中に読んだ絵本については、正直まったく覚えてなくて(苦笑)。絵本は何かしら読んでいたはずなんですけど、子育てが大変過ぎて、記憶が飛んでしまってるんですよ。絵本作家でもそんな感じなので、皆さんもあまり気負わずに楽しむくらいでいいんじゃないかなと思います。真面目にがんばりすぎると、余計につらくなっちゃいますから。自分なりのペースで、ほどほどに楽しめるといいですよね。
絵本の仕事をしながら、保育園で働き始めて5年になります。2年前には保育士の資格も取りました。
保育園では絵本もよく読みます。僕が選んだ絵本を読むというよりは、子どもたちから読んでと言われた絵本を読むので、「へ~、こういうの好きなんだ」と意外に思うこともありますね。
1歳児クラスでかがくいひろしさんの『だるまさんが』を読むときは、体を揺らしながら読むとすごく喜んでくれます。もうちょっと上のクラスの子だと、子どもたちの生活にリンクするような絵本が人気ですね。たるいしまこさんの『おきておきてぷーちゃん』は、なかなか起きないぷーちゃんをお友だちが起こしに来るお話なんですけど、友だちや自分の経験と重ねて共感するのかなと思いました。
この前初めて自分の絵本『とらのこさんきょうだい かえうた かえうた こいのぼり』を読んでみましたが、子どもたちが目の前で純粋に喜んで聞いてくれたのを見れてうれしかったですね。
今は絵本と保育園、半々くらいの感じで仕事をしています。保育園はアルバイトで入っているだけなので、資格を取得したとはいえ、保育士と名乗るのもおこがましいと思ってるんですけどね。本業で保育士をされている方々のことは、本当に尊敬しています。親としても助けられたし、今近くで見ていてもすごいなと感心してばかりです。
新作の『おひるね とんとん』と『せんせい みてて!』は、保育園での子どもたちとの触れ合いの中から生まれた絵本です。
保育園でのお昼寝って、自分が想像してたお昼寝と全然違ったんですよね。もっと優雅な時間なのかなと思ってたんですけど、もうびっくりするほどの大騒ぎで。これで本当に寝られるの?ってくらい、みんな元気いっぱいなんです。
眠りに落ちるまでも様々で、背中をとんとんしてほしい子もいれば、耳たぶを触ってほしい子、おでこを指でトコトコとリズムよく触ると寝る子もいたりして。そんな愛おしいお昼寝のひとときを描いたのが『おひるね とんとん』です。
『せんせい みてて!』は、子どもたちによく言われる言葉をきっかけにつくりました。なぜ「みてて」って言うのかなぁ、なんて考えながら描きましたが、子どもたちは、日々できることが増えるのがただただうれしくて「みてて」と言うのかもしれませんね。
保育園にいると、子どもたちがすごくキラキラ光って見えるんです。あんまり眩しくて、泣きそうになってしまうくらい。これからもそんな子どもたちの姿を絵本に描いていきたいですね。
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想像するのが楽しい!絵本の中の“すき間”石井聖岳さんの絵本『おひるね とんとん』に直筆サインを入れていただきました。ミーテ会員3名様に抽選でプレゼントします。
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石井 聖岳 (いしい きよたか)
1976年、静岡県生まれ。名古屋造形芸術短期大学卒業。学童保育でアルバイトしながら、子どもの本専門店メリーゴーランドの絵本塾に通い、2000年に絵本作家デビュー。2007年、『ふってきました』(文・もとしたいづみ、講談社)で日本絵本賞、講談社出版文化賞絵本賞を受賞。その他の絵本に『おこだでませんように』(文・くすのきしげのり、小学館)、『オレじてんしゃ!』(ほるぷ出版)、『ぷかぷか』(ゴブリン書房)などがある。