vol.35 シゲタサヤカさんの推し絵本
思い出の一冊、大好きな一冊、渾身の一冊など、とっておきの“推し絵本”を紹介してもらうインタビュー「みんなの推し絵本!」。今回は、『まないたに りょうりを あげないこと』や『たべものやさん しりとりたいかい かいさいします』など、食べものが登場するユーモア絵本でおなじみの絵本作家・シゲタサヤカさんにご登場いただきます。
私は幼い頃から、たくさん絵本を読んでいました。好きな絵本についての一番古い記憶は、せなけいこさんの『にんじん』です。おさるがポリポリとおいしそうににんじんをかじる場面では、毎回自分の歯でにんじんをかじっているようなリアルな食感を想像し、ワクワクしていたのを覚えています。
また、わが家には今9歳と6歳の子がいるのですが、上の子が生まれたとき、絵本作家・新井洋行さんご本人から『れいぞうこ』をいただいたんです。
生後2、3か月だったので「まだ読み聞かせは早いかな?」なんて思いながら、試しに顔の前に絵本を近づけて読んでみたら、にこにことページを眺めていてビックリ!しかも必ず同じページで笑うので、「ええ!?わかってるの?」とまたもビックリ!読んでいる私まで面白くなって、何度もくり返し読み聞かせしました。
その後も『れいぞうこ』は、「ぎゅうにゅうさーん」「はーい」と読むだけでいつでもご機嫌になってくれるので、写真を撮るときに見せたり、予防接種のときも病院に持って行ったりと、新米ママだった私にとってお守りのような絵本でした。おかげで表紙もはがれてボロボロですが、数年ぶりに新井さんと再会したときその話をして、ボロボロの『れいぞうこ』にサインを書いてもらいました。今でも手にするだけで赤ちゃん時代の幸せな読み聞かせタイムがよみがえってくる…そんな思い出の一冊です。
『もこもこもこ』は、下の子が1、2歳の頃にハマって、数えきれないほど読みました。教えたわけでもないのに「ぎら!ぎら!」とオリジナルの手の動きをつけながら、絵本に釘付け!全身で絵本を楽しんでいるのが伝わってきました。リズムのよい言葉のくり返しと何とも不思議な世界観には、小さな心を鷲掴みにする何かがあるのでしょうね。
『セミくんいよいよ こんやです』も印象に残っています。セミの幼虫が長年過ごした地中のお家に別れを告げ、地上に出て行くお話なのですが、セミくんが「さようなら、おうち ありがとう」と言い残してハシゴを登っていくシーンを読むと、必ず上の子が感情移入して、「おうちにバイバイしたくない!」と号泣してしまい、読み進められなくなっていたんです。今となっては懐かしい思い出です。
私の作品で、わが家で一番の鉄板絵本は『おいしいぼうし』です。ある日、おじいさんとおばあさんの家の庭に突然現われた「謎の茶色の物体」を、ふたりが恐る恐る口にするところから始まるのですが、そのときの第一声の「おい!」「しい!」のページで上の子も下の子も毎回大笑い!制作時に編集者さんとあれこれ悩みながら決めたセリフなので、狙いどおりのうれしい反応に「やったぁ~!」という気持ちでいっぱいになりました。
子育ての日々は今も続いていますが、これまでずっと読み聞かせを続けてきたかといえばそんなことはなく…はりきって毎晩読んでいた時期もあれば、全然読んでないなあ、なんて時期も多かった気がします。それでもこうして振り返ってみると、その時々に読んでいた絵本にまつわるエピソードがたくさん思い浮かんできます。あれこれ思い出しては懐かしい気持ちになったり、「セミくんで毎回めっちゃ泣いてたの覚えてる?」と成長した子とともに笑い話に花を咲かせたり…。
こんな風に「後になってついてくる楽しみ」も子育て中の読み聞かせの醍醐味なのかな、と思います。皆さんもぜひ無理のない範囲内で、マイペースに読み聞かせを楽しんでみてくださいね!
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シゲタ サヤカ
1979年、神奈川県生まれ、群馬県育ち。パレットクラブスクールで絵本制作を学ぶ。第28回から講談社絵本新人賞で佳作を3年連続受賞。2009年佳作受賞作『まないたにりょうりをあげないこと』(講談社)で絵本作家デビュー。主な絵本に『りょうりを してはいけない なべ』(講談社)、『キャベツがたべたいのです』(教育画劇)、『オニじゃないよ おにぎりだよ』(えほんの杜)、『たべものやさん しりとりたいかい かいさいします』(白泉社)などがある。