Vol.53 『アリのおでかけ』作者・西村敏雄さんインタビュー
赤ちゃんとの絵本の時間を楽しみたい、すべての方へ。選りすぐりの赤ちゃん絵本の誕生秘話や、作家さん・編集者さんが絵本に込めた思いを伺いました。赤ちゃん絵本を楽しむヒントが詰まったインタビュー、今回は西村敏雄さんにご登場いただきます。
『アリのおでかけ』は、雑誌「kodomoe(コドモエ)」の前身「こどもMOE」創刊号の付録として、「小さいお子さんでも楽しめる絵本を」という依頼を受けてつくった絵本で、2012年にハードカバー化されました。今でもたくさんの方に読んでいただけて、とてもうれしいです。
赤ちゃん向けの絵本の文は、何度でも読んでもらえるように、ことばのリズムが大切だと思っています。『アリのおでかけ』では、なるべく説明的なことばを少なくして、「ぶーぶー」「がたがた ごとごと」「びゅーん!」「ずびずびずび~」などの擬音語をたくさん使って、「ことばの音」を楽しんでもらえるようにしました。
お話の展開は、アリ達がバスに乗っておでかけして(移動)、次々に動物達と出会う(発見)、という「移動」と「発見」のシンプルなくり返しで、小さいお子さんでも飽きないように工夫しました。
絵のポイントとしては、バスがどこにいても目立つように赤を使ったことでしょうか。最後のアリクイが出てきてアリ達が逃げる場面はおまけなので、もっと大きくなってから「ああ、そうか…」と思ってもらえればよろしいかと思います。
『ねずみが ぱくっ!』は、「ぱくっ!」ということばの響きからくる幸せなイメージをもとにつくった絵本です。この絵本の中に出てくる動物達は、しっぽを「ぱくっ!」とされて驚きますが、僕のイメージでは「動物達がみんなでじゃれあって遊んでいる感じ」が出したかったので、動物達の顔をちょっととぼけたユーモラスな表情で描きました。
赤ちゃんへの読み聞かせで使う絵本は、楽しい内容のものであれば、どんなものでもいいと思います。絵本の読み聞かせだけでなく、子守歌を歌ってあげたり、やさしく話しかけたり、体を撫でてあげたり、たくさんコミュニケーションをとることが大事な気がします。
赤ちゃんは経験が少ないだけで、いろいろなことを感じ取る力はもっているはず。お母さんやお父さんが赤ちゃんと楽しく接することで、「自分は大切にされている、愛されている」ということを肌で感じながら育つことは、大人になってもなくならない「生きるための栄養」になると思います。
子育てはすぐに結果の出るものではないので、「本当にこれでいいのかな…」と不安になることが多いと思いますが、親も子どもと一緒に迷いながら、少しずつ成長していければよいのではないでしょうか。
プレゼントの応募は締め切りました。当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
西村 敏雄(にしむら としお)
1964年、愛知県生まれ。東京造形大学デザイン科卒業後、テキスタイルデザイナーを経て、絵本作家に。第3回MOE絵本屋さん大賞受賞。主な作品に『バルバルさん』(文・乾栄里子)、『もりのおふろ』(以上、福音館書店)、『うんこ!』(文・サトシン、文溪堂)、『アリのおでかけ』『ねずみが ぱくっ!』(白泉社)、「くまくまパン」シリーズ(あかね書房)、「アントンせんせい」シリーズ(講談社)などがある。