Vol.40 『おっぱいバイバイ / Milky』作者・武田舞さんインタビュー
赤ちゃんとの絵本の時間を楽しみたい、すべての方へ。選りすぐりの赤ちゃん絵本の誕生秘話や、作家さん・編集者さんが絵本に込めた思いを伺いました。赤ちゃん絵本を楽しむヒントが詰まったインタビュー、今回は武田舞さんにご登場いただきます。
『おっぱいバイバイ』は、私自身が体験した、2度の乳腺炎と5度の断乳失敗がきっかけとなって生まれた絵本です。おっぱいをポジティブに忘れさせてくれる絵本はないものかと探したのですが、ピンとくるものがなかったので、最初は自分で絵本を手づくりしたんですね。それがそもそものスタートでした。
赤ちゃんとの毎日がこれほどコントロール不能なものとは、出産前には想像もしていませんでした。当時の私は、育児と仕事を両立させようとするあまり空回りして、夫との関係は最悪に。乳腺炎のため体も絶不調で、完全に負のスパイラルに陥っていました。いわゆる産後クライシスです。このままではすべてがダメになる、と思った矢先、私の手づくり絵本を息子がかじりながら愛読しているのを見た夫が、「これ自分達で出版しようよ」と言い出したんです。
そのひとことで、私はそれまでの負の連鎖を断ち切って前を向くことができました。危機的状況にあった夫婦仲も嘘のように持ち直して、初めての絵本出版に向けて気持ちをひとつに取り組みました。
私だけでなく、食べ物の絵を担当した今井未知さん、おばけの絵を担当した高村あゆみさん、バイリンガル版の翻訳を担当した伊藤由起子さんも、現役の子育てママ。絵本の制作は、4人の経験をすり合わせながら進めていきました。
この絵本のコンセプトは、「ハッピーな離乳のためのお手伝い」です。
一番大切にしたのは、「赤ちゃんに食べ物への興味をもってもらうこと」。おっぱいをやめてもおいしい食べ物がある、ということを伝えるために、子どもの好きな食べ物や特別なおやつを水彩画のやさしいタッチで描きました。ストーリーのナビゲート役は、かわいいおばけ。コミカルな動きでかくれんぼのように登場して、食べることの楽しさを教えてくれます。
それからもうひとつ、「お母さんだけでなく、家族みんなで離乳をサポートしてほしい」という思いも込めました。母乳育児は母と子の絆が深まるという面もありますが、一方で母の負担は心身ともに大きく、追い詰められてしまうお母さんが多いのも事実です。出産から1年近く経つと、睡眠不足などでお母さんの体はボロボロになります。私自身もそうでしたし、そのうえ離乳食も思うように進まず、つくってもぐちゃぐちゃに捨てられる、おっぱいをあげないと泣き止まないというループに心底疲れました。そのため、他の絵本にはありがちな「赤ちゃんはお母さんが大好き!」という表現はあえて入れていません。離乳も育児そのものも、家族みんなで協力して取り組んでもらえたらと考えています。
わが家では今、7歳の長男が、1歳になったばかりの次男に『おっぱいバイバイ』を読み聞かせしています。大好きなバナナを指さして「あーうー」と話したり、「おばけを探して~」と言われると手で目を覆ったりと、かわいい仕草がたまりません。断乳・卒乳のプロセスは十人十色で、正解なんてありませんが、この絵本がハッピーな離乳のために少しでも皆さんのお役に立てれば最高だなと思っています。
武田舞さんの絵本『おっぱいバイバイ / Milky』に直筆サインを入れていただきました! ミーテ会員3名様に抽選でプレゼントします。
プレゼントの応募は締め切りました。当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
武田 舞(たけだ まい)
1979年、秋田県生まれ。大妻女子大学短期学部およびICSカレッジオブアーツ卒業後、22歳で起業。有限会社ゲートジャパン代表取締役。「オンナゴコロをつかむデザイン」をコンセプトに、パッケージや広告等、女性視点を活かしたデザインワークを展開。「20代の起業」や「女性と起業と出産と」をテーマにした講演活動も。2014年、自身の体験をもとに初めての絵本『おっぱいバイバイ』(ゲートジャパン)を出版。断乳研究所代表。
断乳研究所 https://www.dan-nyu.com/