Vol.32 『なきごえバス』作者・えがしらみちこさんインタビュー
赤ちゃんとの絵本の時間を楽しみたい、すべての方へ。選りすぐりの赤ちゃん絵本の誕生秘話や、作家さん・編集者さんが絵本に込めた思いを伺いました。赤ちゃん絵本を楽しむヒントが詰まったインタビュー、今回は、えがしらみちこさんにご登場いただきます。
『なきごえバス』は、動物の名前と鳴き声の図鑑のような絵本があったらいいな、という思いから生まれた絵本です。最初は鳴き声以外に、鳥が羽ばたく音などの擬音語、擬態語も盛り込んでいたんですが、編集者さんと相談しながら、小さい子も楽しめるようにと、ぐっと削ぎ落して今の形になりました。
工夫したのは、椅子と段ボールでつくったバスが、徐々に本物のバスに変わっていくところ。他にも、ねこさんの帽子をすずめさんが届けてくれたりとか、いぬくんがこぶたちゃんにバナナを分けてあげたりとか、お話の本筋とは関係ない様子も描いています。子どもは大人が思う以上に絵をよく見ているので、何度か読んでもらううちに気づいてくれるんじゃないかなと。
まだ動物にあまりなじみのない1歳ぐらいの子も、バスにどんどん乗ってくる動物達の姿を見ながら、お話の中で自然と動物の鳴き声や名前に親しんでいくことができますし、一緒に鳴き声をまねっこしたり、鳴き声を聞いて動物をあてっこしたりして遊ぶのも楽しいと思います。
私には今、6歳の娘がいるんですが、娘が生まれたばかりの頃は、ふたりきりでいると何をしゃべったらいいかわからなくて、無言になってしまうことがよくありました。
でもある時、娘に読み聞かせていた赤ちゃん絵本の中のことばが、私の口からつらつらと出てきたんです。それで何となく間がもつというか、赤ちゃんと会話しているような気分になって、救われたんですね。絵本のことばはどれもやさしいから、声に出して読むのがとても楽しくて。絵本のおかげで、無言でいる時間が減って、娘とのやりとりが楽しくなりました。
昨秋、静岡県三島市で絵本専門店を始めたんですが、毎週木曜日の午前中は赤ちゃん向けのおはなし会を開催しています。平日昼間の時間帯、赤ちゃんとふたりでどう過ごしたらいいか…という方々のための居場所になれたらなぁと。お店で扱っている赤ちゃん絵本で個人的におすすめしたいのは、『ゆびさしちゃん』と『どんないろがすき』。どちらも娘が赤ちゃんの頃にはまだなかった新しい絵本ですが、絵もかわいくて、親子で楽しめますよ。
プレゼントの応募は締め切りました。当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
えがしら みちこ(江頭 路子)
1978年、福岡県生まれ。熊本大学教育学部卒業。主な作品に『あめふりさんぽ』(講談社)、『なきごえバス』(MOE絵本屋さん大賞2016パパママ賞第1位、白泉社)、『いろいろおてがみ』(小学館)、『あのねあのね』(あかね書房)、『あなたのことがだいすき』(原案・西原理恵子、KADOKAWA)などがある。2018年10月、静岡県三島市に絵本専門店「えほんやさん」をオープン、代表として運営に関わっている。(photo by 後藤利江)