Vol.23 『に~っこり』作者・石津ちひろさんインタビュー
赤ちゃんとの絵本の時間を楽しみたい、すべての方へ。選りすぐりの赤ちゃん絵本の誕生秘話や、作家さん・編集者さんが絵本に込めた思いを伺いました。赤ちゃん絵本を楽しむヒントが詰まったインタビュー、今回は石津ちひろさんにご登場いただきます。
『に~っこり』から始まった「はじめてであうえほん」シリーズは、赤ちゃんへの愛情をたっぷりと込めてつくりました。工夫したのはやはり、ことばのリズムですね。読んでいて心地よく、聞いていても心地よいものになるように、シンプルでリズミカルなことばを選んでいます。
5作目の『ばあ~っ!』は、娘との思い出がきっかけになっているんですよ。娘がまだ赤ちゃんだった頃、私が何かで落ち込んで泣いていたことがありました。そうしたら、小さな娘がピアノの陰から顔を出して、明るい声で「ばあ~っ!」と言いながら、私にとびっきりの笑顔を見せてくれたんです。娘は私が笑い始めるまで、同じことを何度もくり返しました。その時の幸福感が忘れられなくて、「ばあ~っ!」というシンプルなことばをテーマに絵本をつくったんです。
6作目となる新作『ぎゅ~っ!』は、スキンシップの絵本です。読んだ後で、互いに「ぎゅ~っ!」と抱きしめ合いたくなる…そんな作品に仕上がっていたとしたら、これほどうれしいことはありません。このシリーズが、ご両親とお子さん、もしくはおじいちゃんおばあちゃんとお孫さんの間をつなぐ、架け橋になってくれたらと願っています。
娘とはよく一緒に絵本を読みました。ファーストブックは、ミッフィーの絵本。セリフはほとんどないので、読むたびに思いつきでストーリーをつくって楽しんでいましたね。
最近は電車の中などで、赤ちゃんにスマホやゲーム機を持たせて、お母さんも自分のスマホと向き合っている…といった光景を見かけて、残念に思うことがあります。絵本には、機械とはちがったあたたかみがあるでしょ? 赤ちゃんと大人との間に愛情を育んでくれる、コミュニケーションツールでもありますよね。赤ちゃんとの毎日の中に、上手に取り入れていってもらえたらいいなと思います。
いろいろな絵本があって迷うこともあるかもしれませんが、ご自分で読んでみて納得できるもの、お子さんと一緒にくり返し読んでいきたいと思えるものを選んでいただきたいですね。読む時はできるだけ笑顔で、そして明るい声で。絵本を通じて、お子さんとのコミュニケーションを存分に楽しんでください。
プレゼントの応募は締め切りました。当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
石津 ちひろ(いしづ ちひろ)
1953年、愛媛県生まれ。早稲田大学文学部仏文科卒業。3年間のフランス滞在を経て、絵本作家、翻訳家に。『なぞなぞのたび』(絵・荒井良二、フレーベル館)でボローニャ児童図書展絵本賞、『あしたうちにねこがくるの』(絵・ささめやゆき、講談社)で日本絵本賞を受賞。『くだものだもの』『おやおや、おやさい』(絵・山村浩二、福音館書店)、『に~っこり』『おいし~い』(絵・くわざわゆうこ、くもん出版)、『くらべっこしましょ!』(絵・松田奈那子、白泉社)、訳書に「リサとガスパール」シリーズ(ブロンズ新社)ほか多数。(プロフィール写真撮影:黒澤義教)