イチ押し絵本情報

白く明るい雪に覆われた町を、詩情豊かにうたう(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.370)

2022年1月13日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 白く明るい雪に覆われた町を、詩情豊かにうたう

今回ご紹介する絵本は、アメリカの作家アルビン・トレッセルトさんの作、スイス出身の絵本作家ロジャー・デュボアザンさんの絵による『しろいゆき あかるいゆき』。原書『White Snow, Bright Snow』は1947年初版で、翌年コルデコット賞を受賞。日本では1995年に作家の江國香織さんの訳で紹介されたロングセラーです。

しろいゆき あかるいゆき なめらかに ふかく…。郵便屋さんやお百姓さん達は雪が降りそうな気配に空を見上げ、子ども達は雪の最初のひとひらを待ち受けています。そんな人々や町を雪は静かに包んでいきます。雪と人々の穏やかな生活を描いた詩情豊かな絵本。

見開き

しずかなよるに ふうわり おっとり…。冒頭のページには、この絵本全体を象徴する一編の詩が載っています。ゆったりとした丁寧なオノマトペがくり返され、雪が降るさまを表す「ひひとして」などの聞きなれないことばと共に、静かに降り積もっていきます。ことばが雪のように、日常を白銀の世界へと変えていくのです。

雪のお話ではありますが、お話の最初はまだ雪が降っていません。まずは町の人々やうさぎ、子ども達が、次々と雪の気配を感じます。十分に期待が高まったところで、気勢をそぐようにそっと、雪の最初のひとひらが落ちてきます。

雪が降り積もることで、町には様々な変化が訪れます。道路も家の屋根も庭も真っ白く雪で覆われます。夜には街灯に照らされて輝き、窓ガラスには霜が降ります。雪かきに追われたり、転んだり、風邪をひく人もいるかもしれません。もちろん子ども達にとっては、雪は最良のおもちゃであり、遊び場です。

詩人の目に映る雪景色や雪のある暮らしは、雪を知らない子はもちろん、雪国に暮らす子も気づかなかったことがたくさんあるでしょう。それを一つひとつ繊細に丁寧に描くことで、子ども達の心の中に、雪とはどんなものか、雪のある暮らしとはどんなものかが築き上げられていきます。そして次に雪を見た時に、子ども達の目にはこれまでと違った景色が映るのです。これこそが、子どもにこの絵本を読んであげたいと多くの大人が思ってきた理由でしょう。

<ミーテ会員さんのお声>
綺麗な訳やな、と思ったら江國香織さんやった。さすが。娘は、この本にでてくるおまわりさんのおくさんがつぼに入り、ページを進める度に「おくさんは?」と聞いてきて、おくさんが出てくるページばかり何度も読まされた。次の日にはママにも「おくさんがでてくるから読んで」とお願いしていた。何がつぼだったのだろう?(2歳10か月の女の子のパパ)

『きんいろのとき』は、作・絵のほか訳まで同じ3人による絵本。こちらも詩情豊かに、アメリカの夏から秋へと移り変わる情景を描いています。合わせて楽しんでみてはいかが。


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