毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、片山令子さんの文、片山健さんの絵による『たのしいふゆごもり』。1991年に出版されたロングセラーです。
森の大きな木の根元に、こぐまとお母さんが住んでいました。こぐまはお母さんに、ひとりでベッドで眠れるよう「ぬいぐるみをつくって」と頼みます。翌日冬の気配を感じたお母さんは、こぐまと一緒に冬ごもりの用意をしに出かけます。木の実を集めたり、魚を獲ったり、枕に使う綿を摘んだり。家に帰ったら、お母さんのつくったごちそうをいただきます。そして、その後は…。
物語の前半は、くまの母子が森で食べ物などを集める様子が描かれます。舞台は、豊かな実りの季節を迎えた秋の森。背景が金色に輝く中、冬眠をする様々な生き物が準備に大忙しです。お母さんは、ハチも大きな魚も何のその。頼りがいのある背中に安心しきったこぐまは、見よう見まねでお手伝いをしたり、半分以上は友だちと遊んだりして、充実した楽しい時間を過ごします。
後半は一転家の中。赤々と燃える暖炉の火、たっぷりとしたごちそう、母子の何気ない会話。あたたかく、満足感と安心感に満たされた空間です。母ぐまは忙しくしているようで、子どもの様子をきちんと見ていることもわかります。前夜頼まれたぬいぐるみを、こぐまの友だちや素敵な思い出を詰め込んで縫ってくれるのです。こぐまは、おいしいごちそうでおなかを、楽しい思い出とお母さんの愛情で心を満たして、自分のベッドで眠るのです。
この絵本について語る時、忘れてはならないのが片山健さんの絵です。特に注目したいのが、2回登場する、文字がなく、見開きいっぱいに絵が描かれたページ。秋の森を行くくまの母子と、家の入口から森に降る雪を見るふたりの絵です。版型が大きいこともあって、子どもにとって、紅葉の森や降りしきる雪が目の前いっぱいに広がるように感じることでしょう。お母さんの愛情深いまなざし、子どもの天真爛漫さ、毎日を楽しく暮らす様子、豊かな森と冬の訪れ。時にことば以上に、くまの母子に通い合う愛情を雄弁に語るのです。
ところで、この絵本にはお父さんぐまは登場しません。これはおそらく、子育ては母ぐまだけがする、くまの生態に合わせたものだと思われます。ちなみに、首の周りにネックレスのように白い毛があることから、この母子はツキノワグマでしょう。現実のくまらしい生態と、人間の母子のようなしぐさ。その絶妙な塩梅がお話の魅力をさらに高めていると言えるでしょう。
<ミーテ会員さんのお声>
最近、片山健さんのくまがお気に入りです。『たのしいふゆごもり』と『くまのつきのわくん』のお話と絵が特に大好き。読み終わると毎回、くまの子になりきってお話の世界で遊んでいます。(4歳4か月の男の子のママ)
片山令子さんの遺作となった作品『おねぼうさんはだあれ?』は、冬ごもりから起き出す動物達のお話。セットで読んでみてもいいかもしれませんね。
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