毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、バージニア・リー・バートンさんによる『せいめいのれきし 改訂版』です。『せいめいのれきし』は、1962年に米国で出版され、1964年に石井桃子さんの訳で日本に紹介された名作。改訂版は、2009年に米国で出版されたUpdated Editionを元に、2015年現在の知見に基づき、国立科学博物館の真鍋真さんの監修で改訂、出版されました。
地球が生まれた時から、今現在までの壮大な命のリレーを、5幕の劇仕立てで展開する絵本です。『ちいさいおうち』、『いたずらきかんしゃちゅうちゅう』などで知られるバートンさんの最後の作品。
地球の生命の歴史を、「古生代」「中生代」「新生代」「にんげんの時代」「現代の人々の生活」の5幕で紹介。それぞれの場面には、三葉虫や恐竜などが主役の動物として、藻類やソテツ類、被子植物などが主役の植物として登場します。
見開きの左ページには、生き物の進化の歴史を文章と挿し絵で解説。右ページは舞台になっていて、時代ごとの生き物が地球の風景をバックに、迫力のシーンを演じます。右の絵は、美しくバランスよく描かれていると同時に、動物も植物も、その時代の地球の景色も、当時の知見に基づき正確に描かれているのです。細部まで行き届いた絵から、子ども達はどれほど多くの情報を受け取ることでしょう!
日本語版の出版に先立ち、作者のバートンさんは来日し、訳者の石井桃子さんと交流を深めました。石井さんが主宰していた「かつら文庫」で子ども達を前に恐竜の絵を描いて見せたこともあったそう。『ヴァージニア・リー・バートンの世界』(小学館)には、その際の絵の一部が紹介されています。
最初に出版されてから、改訂版が出されるまでの50年の間に、地球や生命の歴史について、様々な研究が進みました。監修の真鍋真さんのあとがきによると、たとえば「恐竜は完全に絶滅してしまったのではなく、一部は鳥類として現在も進化をし続けている」ため、改訂前の文章は「(恐竜は)科学博物館のなかの化石としてみるよりほか、であうことはありません」となっていましたが、改訂後では「鳥類に進化したなかまをのぞけば、博物館で化石のすがたでしか、恐竜にであうことはありません」と表現が変えられています。
ただ、知識は時代と共に古びていくかもしれませんが、地球の、生命の歴史を、子ども達の膝の上で紐解いて見せるこの絵本の魅力はまったく失せていません。真鍋さんが『深読み! 絵本「せいめいのれきし」』(岩波書店)のまえがきに書かれた「今までの歴史があって、今の自分があって、そして明日が始まっていくのだという、当たり前だけれど大切なことに、改めて気づかせてくれる」ということばは、この絵本のずっと変わらない本質的な魅力を語っていると言えるでしょう。
<ミーテ会員さんのお声>
『せいめいのれきし』って、相当難しい内容だと思うのですが、娘のお気に入りで、たまに自分で開いて眺めています。一昨日は、久しぶりに読んでもらいたくなったのか、お父さんに頼んでいました。一冊全部読むのは長いので、お父さんは「『プロローグ』だけな」と。地球が生まれるところから、生命が生まれる頃まで。そして昨日は、「お母さんは『1幕』ね」。1幕は古生代。海の底から生命が始まって、三葉虫が出てきて、恐竜が登場し始めるころまでです。何度読んでも、4歳児には難しいと思うのですが、なぜか好きなんですよね~。しばらくは毎晩少しずつ読まされそうです。(4歳8か月の女の子と8歳3か月の男の子のママ)
バートンさんは、この作品をつくるために、8年間にわたり、何度もアメリカ自然史博物館に通ったそうです。その時のスケッチが何枚も残っていて、アメリカの公共図書館システム「Free Library of Philadelphia」で、自宅からでも自由に閲覧することができますよ。
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