イチ押し絵本情報

ひよこの声が七変化(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.343)

2021年7月1日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 ひよこの声が七変化

今回ご紹介するのは、さとうわきこさんの文、二俣英五郎さんの絵によるロングセラー『とりかえっこ』。初版は1978年で、第1回絵本にっぽん賞を受賞した作品です。

外へ遊びに出かけたヒヨコが、道すがらネズミと出会います。「鳴き声とりかえっこしようよ」とヒヨコが言うと、ネズミが「ぴよぴよ」、ヒヨコが「ちゅう ちゅう」。その後もヒヨコは、出会う動物達と次々に鳴き声をとりかえっこして…。

見開き

40年以上前に描かれた絵本ですが、主人公のヒヨコには普遍的な愛らしさが感じられます。動物達は畑を耕していたり、薪を割っていたり、じょうろで花に水をやっていたりと、ある程度は擬人化されているのですが、極端なデフォルメはされていません。それぞれの特徴を捉えつつ、やさしいタッチで描かれた動物達、絵本の隅々に描かれた、テントウムシやカマキリなどの小さな生き物達が、子ども達を絵本の中の世界に引き込んでいきます。

興味深いのが、この絵本を楽しめるようになる年齢です。ヒヨコは「ぴよ」、ネズミは「ちゅう」、ブタは「ぶう」…と、それぞれの動物の鳴き声をしっかり理解しているからこそ、鳴き声をとりかえっこした後の様子が楽しめるので、1、2歳だとまだこの絵本の本当の面白さは理解しがたいのです。

でも、動物と鳴き声の関係がわかってくると、ヒヨコが「ちゅう」、ネズミが「ぴよ」と鳴いていることの面白さや、猫に襲われそうになった時のヒヨコの上手な対処法、家族の驚いた様子などが楽しめるようになります。初めて読んだ時に楽しめなかったとしても、まだ理解が追い付かなかっただけなので、またしばらくしてから読んであげるとよいでしょう。

短い文章でユニークな物語を紡いだのは、『いそがしいよる』をはじめとする「ばばばあちゃん」シリーズでおなじみの、さとうわきこさん。ユニークなくり返しの展開もさることながら、ちょっととぼけたラストも秀逸ですよ。

<ミーテ会員さんのお声>
自分で読んで「面白いよこれ!」と持ってきて読んでくれた。鳴き声のこともびっくりしていたが、右下のタマゴの絵も面白がっていた。(5歳2か月の女の子のママ)

この絵本には『I Say,You Say』というタイトルでCD付きの英語版も出版されています。動物達の鳴き声を英語で楽しんでみたい方は、ぜひチェックしてみてください。

▼さとうわきこさんのインタビューはこちら
「絵本を開けば体験できる『自分が体験できなかった世界』」


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