毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、石井桃子さんの文、横内襄さんの絵による『ちいさなねこ』。1963年に月刊「こどものとも」の一冊として刊行され、1967年に出版されたロングセラーです。
ちいさな猫が、お母さん猫が見ていない間に、部屋から抜け出してしまいました。子どもに捕まったり、自動車にひかれそうになったり。なんとか助かりますが、今度は大きな犬が現れて…。
大きな瞳に柔らかそうな毛並み。体のあたたかさまで伝わってきそうなリアルな茶トラの子猫が、何かに気を引かれたようにこちらを見ています。主人公の小さな猫です。
大きな部屋にちんまり座る様子から、両手に収まるほどの大きさだと想像できます。お話を聞く子ども達が子猫の小ささを実感したところで、子猫がひとりで出かけることを知らされます。「大丈夫かな」という絵本からの語りかけによって、子ども達は子猫の冒険を見守ろうと、グッとお話の中に入り込むのです。
このシーンからしばらく、子猫の低い視点で絵が描かれます。子どもにつかまり、自動車にひかれかけ、犬にちょっかいを出して追いかけられます。いずれも、圧倒的に大きな存在として描かれ、子猫の感じたであろう恐ろしさを共有できます。ただ、これだけ大きな存在の子どもや犬に対して、子猫はひるまず爪でひっかいて対抗してみせます。子ども達は、子猫に自分を重ね合わせ、冒険にハラハラドキドキ、活躍にワクワクすることでしょう。
でも、子ども達がこのお話を何回も聞きたがるのは、この後お母さん猫が助けてくれるのを知っているから。鳴き声を聞きつけたお母さん猫は、同じコースをたどって、子猫の元に向かいます。子どもも自動車もかすむほどの存在感で描かれ、子猫が必死の思いで通った道も、「子どもの側を通り抜け、自動車をよけて」と、1文足らずでさらりと通過。頼れるお母さん猫は、体の大きな犬も追い払い、子猫を助け出します。
お母さん猫の口にくわえられ、おうちに帰ってきた子猫は、おっぱい飲んで一安心。安心して帰れる場所があるから、子ども達は心おきなくお話の主人公と共に、また冒険に出かけられるのです。
絵を手がけたのは洋画家の横内襄さん。観察に基づいた正確な描写で、子猫の動きを見事に写し取っています。怒ったり、びっくりしたり、生き生きとした子猫の表情も、この絵本の大きな魅力のひとつです。このお話は、作者の石井桃子さんがケガをした猫を保護したことから生まれたそう。絵の横内さんも絵本制作当時、猫を飼われていたとか。実際の猫がモデルになっているからこそ、シンプルな物語ですが、実際に起こった出来事のような重みが感じられるのでしょう。
<ミーテ会員さんのお声>
今日は絵本『ちいさなねこ』を借りてきました。娘が猫好きだから、というだけの理由で選んだのですが、ツボにはまったようです。この本をきっかけに絵本=楽しいと思ってくれたみたいなのがとてもうれしいです。うれしいけど、「もう1回」の嵐で、今日ももう5回目だ…。(1歳3か月の女の子のママ)
石井桃子さんは、数々の絵本の翻訳も手がけられています。『ちいさなうさこちゃん』、『こすずめのぼうけん』など、ロングセラー&名作ピックアップでも多数ご紹介しているので、あわせて読んでみてくださいね。
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