毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、マーシャ・ブラウンさんによる『ちいさなヒッポ』。1969年にアメリカで出版され、1984年にうちだりさこさんの訳で日本に紹介されたロングセラーです。
カバの子・ヒッポは、大きなお母さんのそばにいれば怖いものなし。ある日、大人のカバ達が川の底で寝ているとき、ヒッポは水面に出ようとしてワニに襲われてしまいます。ヒッポはどうなってしまうのでしょう…?
この絵本を手に取ったら、まず見てほしいのが表紙と裏表紙です。表紙は、カバの親子が見つめ合い何かを話すほほえましいひとコマ。絵は裏表紙までつながっていて、その裏表紙の半分以上は、お母さんカバの体で占められています。お母さんの大きさ、力強さ、そして子どもが抱く安心感が、ひと目で伝わってきます。
生まれた時からお母さんのそばを離れたことがないほど、愛情深く育てられたヒッポ。ある日、お母さんから生きていく上で必要なことばを習います。「グァオ、こんにちは!」「グァオ、助けて!」。
ことばを習うと、ヒッポはすぐに使ってみます。お母さんの後ろからなら、まわりの生き物達に大胆に話しかけられます。いかにも子どもらしい行動に、読み聞かせを聞く子ども達は、自分に引き付けて話を聞くことでしょう。
だからこそ、次に訪れる危機を、緊張し、集中して聞くのです。ちょっぴり群れから離れてしまったヒッポに、自然の恐ろしさが牙をむきます。その時、お母さんが教えてくれたことば「グァオ、助けて!」が役に立つのです。声を聞いたお母さんが駆けつけ、圧倒的な力で守ってくれ、物語はハッピーエンドとなります。
物語に深みを与えているのは、ヒッポの子どもらしい日常を描きながら、その中にカバの生態を織り交ぜていること。水辺に暮らすこと、昼は群れで固まって眠り、日暮れになってから食料の草を求めて活動することなどが、自然と頭に入ってくるのです。
また版画という手法も、この絵本の魅力を高めています。力強い輪郭線でカバの力強さを示すと同時に、細かな彫りと版木の木目を生かした刷りで肌の質感も繊細に表現しています。また、色合いも鮮やかな赤、紺、オリーブグリーンの3色を主体に、濃淡や色を重ねることで、豊かな自然と生き生きとしたカバの表情を伝えているのです。
<ミーテ会員さんのお声>
赤ちゃんカバのヒッポが、ワニに食べられそうになるところが怖くて、読めなかった絵本。しばらくぶりに読もうとしたら、まだ「怖いの」という。そこで「お母さんが助けてくれるから大丈夫でしょ。お姉ちゃんも抱っこして読もうか?」と提案すると、ニコニコして絵本を持ってきた。安心したのかな?(3か月、4歳2か月の女の子のママ)
マーシャ・ブラウンさんは、作品によって画風を変える作家としても知られています。ロングセラー&名作ピックアップでも紹介した、『三びきのやぎのがらがらどん』や、処女作の『ちいさなメリーゴーランド』など、同じ作家だとはすぐに気づかないかも。ぜひ見比べて読んでみてくださいね。
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