イチ押し絵本情報

時代劇風の虫の町で クモの親分大捕り物(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.326)

2021年3月4日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 時代劇風の虫の町で クモの親分大捕り物

今回ご紹介する絵本は、秋山あゆ子さんによる『くものすおやぶん とりものちょう』。2003年に月刊「こどものとも」に掲載され、2005年に出版されたロングセラーです。

春爛漫のある日、老舗「ありがた屋」に盗みの予告状が届きます。助けを求められた、岡っ引きのくものす親分は…。桜吹雪の舞う虫達の町を舞台にした、奇想天外で楽しい本格派時代劇絵本。

見開き

舞台となる虫達の町は、まるで時代劇の江戸の町のよう。主人公の「くものす親分」ことオニグモのあみぞうは、十手を片手に岡っ引き姿。桜と柳が植わった川沿いの道には蔵が立ち並び、きれいな着物に身を包んだ蝶やハチの娘に、天秤棒を担ぐタガメ、托鉢姿のセミなど、ほどよく擬人化された虫達が思い思いに過ごしています。どの虫がどんな姿で、どんな暮らしぶりなのかを想像したくなります。

しかしそんな間もなく、アリが営むお菓子屋「ありがたや」の奉公人が駆け寄ってきて、盗人から予告状が来たと告げ、物語が動き始めます。親分はクモの糸を自在にあやつって、盗人を捕獲する作戦です。対する盗人「かくればね」は、羽の模様を変えて隠れる技で、追手をかわします。

盗人がふすまや掛け軸の模様に擬態して隠れるので、物語に探し絵的な面白さが加わります。さらに、家中を逃げ回るため、「ありがたや」の店構えだけでなく、座敷、仏間、台所にトイレまで俯瞰で見ることができ、虫世界に合わせたこだわりの調度品も目に飛び込んできます。つくり込まれた世界観に、子どもはもちろん大人も二度三度と読んでみたくなることでしょう。

ユニークで豊かな虫の世界を描いている秋山あゆ子さんですが、ミーテカフェインタビューの中で、子どもの頃から虫好きだったわけではないと明かしています。大人になって仕事でクモの絵を描くために昆虫図鑑を開いたところ「クモの姿かたちの美しさに感動して、どんどん惹きこまれて」、そこから他の虫への興味もふくらみ、漫画や絵本で虫の世界を描くようになったそうです。この絵本が、虫が苦手なママ・パパにも支持される理由は、この辺りにあるのかもしれません。

さて時代劇風の物語は、事件の解決も勧善懲悪、「これで いっけんらくちゃくだ」となります。他にも子ども達が耳慣れない「ふてえやろうだぜい」「がってん しょうち」などのことばがいろいろ登場します。読み聞かせの際には、親分達の気分になって格好よく読んでみてはいかがでしょうか。

<ミーテ会員さんのお声>
虫好きの長男にと図書館で借りてきた『くものすおやぶん とりものちょう』。期待通り大ヒット! 絵もストーリーもとってもユニークで、読み終わって思わず「もう一回読んで!」というお兄ちゃんの気持ち、ママもよくわかったよ~。(2歳6か月と5歳6か月の男の子のママ)

続編に『くものすおやぶん ほとけのさばき』があるほか、『こんにちは また おてがみです』の中にも、くものすおやぶんからの手紙が入っていますよ。

また、秋山さんの世界観にハマってしまった方は、『みつばちみつひめ てんやわんやおてつだいの巻』のシリーズもぜひ読んでみてくださいね。主人公がみつばちの女の子だけあって、より華やかでかわいらしいお話になっています。

▼秋山あゆ子さんのインタビューはこちら
「興味を持てば、世界はぐんと広がる」


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