イチ押し絵本情報

歯痛のワニさんVS歯医者さん!? ユーモア絵本(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.286)

2020年5月21日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 歯痛のワニさんVS歯医者さん!? ユーモア絵本

今回ご紹介する絵本は、五味太郎さんによる『わにさんどきっ はいしゃさんどきっ』。1984年に出版されたロングセラーです。

いやいやながら歯医者さんに行ったワニさんと、こわごわと治療を始めた歯医者さん。どちらもドキドキです。同じ場面で同じことばが両方の口をついて出る、愉快な絵本です。

見開き

歯みがきをテーマにしたロングセラー絵本だけあって、歯医者さんの待合室で出合ったという方も少なくないのでは。「だから 歯みがき歯みがき」という教訓で終わるのですが、五味太郎さんの作品ですから、一筋縄ではいきません。

「ゆっくり遊んでいたいけど いかなくちゃ いけないね」。お話にはワニさんと歯医者さんのふたりが登場し、それぞれに同じセリフを言います。立場も違えば心情も違うふたり。ワニさんは、痛む歯を治療しに歯医者に行かなくてはいけない一方、歯医者さんは、お客さんが来たので仕事に行かなくてはいけないのです。ただし、詳細な説明は一切なし。読者は絵から読み取ることを求められているのです。

その後も、ワニ・歯医者双方の行動に対して同じことばをくり返しながら、お話はすすんでいきます。歯医者が怖いワニと、ワニが怖い歯医者が「かくごはできた」と挑むシーンは、緊張感が最高潮に達します。しかし、第三者としてお話を読んでいる側からすると、ふたりが真剣になればなるほど、笑いがどんどんこみ上げてきます。

「どきっ」や「怒っていても始まらない」など、印象に残る短いことばがくり返されるので、子ども達はすぐに覚えることでしょう。また想像の余地が大きいので何度でもお話を聞きたくなるのです。

最後に、虫歯の痛みと治療の大変さを身をもって知っているワニさんから一言「だから 歯みがき歯みがき」。他の歯みがきの大切さをうたった絵本とはまた違う説得力をもって、子ども達に伝わることでしょう。

<ミーテ会員さんのお声>
息子は自分で歯みがきするのが大嫌い。歯ブラシをくわえさせるだけでも一苦労。今日はどんな手で息子に歯みがきさせようかと考え、ふと、前に読んだ『わにさんどきっはいしゃさんどきっ』の始めの部分を暗唱してみた。すると、息子はニヤッと笑って歯ブラシをくわえてから、絵本を持ってきた。読み聞かせる間、自ら歯ブラシをくわえ、磨いてる風な動きをしながら、聞いていた。読み終わると「もう一回」。3回連続で読んだが、その間、ずっと歯ブラシは口の中。こんなこと初めてだ!(1歳5か月の男の子のママ)

ミニ版英語版もあるので、いろいろな楽しみ方ができますよ。

▼五味太郎さんのインタビューはこちら
「おもしろいから絵本にする、 ただそれだけ」


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