毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、エルサ・ベスコフさんによる『ペレのあたらしいふく』。1912年にスウェーデンで出版され、日本では1976年におのでらゆりこさんの訳で、世界傑作絵本シリーズの一冊として出版されたロングセラーです。
ペレは子羊を1匹、飼っていました。ある日、ペレは子羊の毛を刈りとり、おばあちゃんに頼んで、糸に紡いでもらいます。その代わりに…。周囲の人に協力してもらいながら、羊の毛から一着の服ができるまでを詩的に美しくつづった名作。
物語の縦糸は、羊の毛から洋服ができあがるまでの工程です。羊の毛を刈り、すき、糸につむぎ、染め、織り、仕立てる。たくさんの人の手を経て、ものができあがる仕組みが丁寧に描かれています。子ども達にとっては、初めて知ることばかりでしょう。
横糸は、新しい服を手に入れる対価として、ペレが相手のお手伝いをするお話です。服づくりの工程を担ってくれる大人は、「もしも…をしてくれるならね」と、草取りや牛の番、おつかいなど、子どもができる仕事をペレに頼みます。子ども達は、自分と変わらない年の子どもが、次はどうやって服につながるものを手に入れるのか、身に引き付けてお話を聞くことでしょう。
ここに描かれているのは、働くということのシンプルで根本的な姿。そして、大人達とペレの対等な関係でしょう。大人が一方的に手助けするのではなく、ペレは対価を支払います。小さいながらも社会の一員として扱われている証拠です。ただそれは、周囲の大人達のあたたく深い包容力によって、成立しています。絵本の最後のシーンで新しい服を見せるペレを大人達が見守る様子は、そんな周囲のあり方を象徴しているようです。
その最後のシーンのペレの頬は、紅潮して誇らしげ。自分で働いてものを得る達成感が、静かに伝わってきます。また、苦労して手に入れたものに対するペレの思いは、子ども達の心にものを大切にする気持ちを芽生えさせるのではないでしょうか。
このお話をより豊かであたたかいものにしているのは、背景に描かれた美しい詩的な絵です。遠くの森や山、草原に湖水、糸車や機織り機、暖炉や家具、町の雑貨屋…。一つひとつの風景が丁寧に描かれ、健やかで豊かな村の暮らしが浮かび上がってきます。そのことが、自立心あふれるペレの姿を、より説得力あるものとしているのです。
<ミーテ会員さんのお声>
義理の妹の結婚式が近づいてきたので、子ども達に洋服を用意しました。上の子は入学式に来た服…と思っていたら、ペレの服状態に! 大きくなってたんだなぁ。子ども達に絵本を読み聞かせをしてあげると、現実とのリンクが面白かったみたいで、一生懸命聞いていました。(7か月の女の子、4歳5か月、7歳1か月の男の子のママ)
訳者のおのでらさんは、『ムーミンパパ海へいく』など、ムーミンシリーズの翻訳者としても知られています。ムーミンシリーズには『絵本・ムーミン谷から1 ムーミン谷に春がきた』などの絵本版も出ています。この絵本をきっかけに、北欧の自然や人々が描かれた絵本を読んでみても楽しいかもしれませんね。
無料会員登録後は、過去の「絵本子育て相談室」など、
様々な絵本情報が読み放題!
ぜひミーテにご登録ください♪