イチ押し絵本情報

すまし顔のおひなさまが、もりでひなまつりをしたら…(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.274)

2020年2月27日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 すまし顔のおひなさまが、もりでひなまつりをしたら…

今回ご紹介する絵本は、こいでやすこさんによる『もりのひなまつり』。1992年に月刊誌「こどものとも」に掲載され、2000年に出版されたロングセラーです。

家の蔵に住むねずみばあさんに、のねずみの子ども達から「森のひなまつりをしたいので、おひなさまを連れてきてください」という手紙が届きました。そこで、ねずみばあさんはおひなさまと一緒に森に出かけ、楽しく過ごしますが…。

見開き

「おひなさまは、ずっと箱に入れられて退屈じゃないのかな」「私達と違って、おひなさまはいつもすました顔をしているなぁ」。おひなさまを前にして、ごく自然と浮かぶ思いでしょう。退屈ならば出かけるチャンスは逃さないはず、実のところ泣いたり笑ったり、歌ったり踊ったりするのでは? そんな発想から生まれただろう物語は、20年以上多くの親子に親しまれ続けています。

物語の魅力は、やはり美しく描かれたおひなさま達。森の動物達が茶色のグラデーションなのに対し、色鮮やかな衣装を身にまとった、白塗りの見目麗しいおひなさま達は際立って見えます。見事な演奏にうた、踊りが披露されるパーティーの特別感に、お話を聞く子ども達の心は浮き立つことでしょう。

それが一転、顔は汚れ、髪も服も乱れ、「こんなに汚くてはうちのひなまつりにだしてもらえまい」という大ピンチが訪れます。

そこで活躍するのが、ねずみばあさんです。このお話、もともとは作者・こいでやすこさんの、生家の天井裏にいたねずみ達から着想を得たものだそう(「こどものとも」432号折り込み付録)。順調な時のねずみばあさんは、心配性な物語の舞台回し役。ひとたびピンチが訪れれば、八面六臂の大活躍でみんなを窮地から救うヒロインに大変身。この物語の主役は、一見おひなさま達のようでいて、もしかしたらねずみばあさんなのかもしれません。

おばあさん自身について、文章ではあまり詳しく書かれていません。ただ、絵は文よりも雄弁に語っています。描き込まれた蔵の中の家は、たくさんの種類の、しかも用途別にきちんと仕分けられた裁縫道具。手仕事が大好きで、丁寧な暮らしをしている地に足のついた人柄が透けて見えます。こいでさん自身、「室内や台所の調度品は、それぞれの性格を表しますので、お皿や茶碗やおなべもしっかり描きます」(「こいでやすこの絵本原画とこどものともの歩み展」より)と語っておられます。

さて、安心してお話を楽しめるのは、物語の骨組みがしっかりしているから。起承転結がはっきりし、絵は丁寧に描き込まれ、ひなまつりの意味もしっかり入れ込まれていること。何より、登場するおひなさまやねずみばあさん達の、絵本を閉じた後もそれぞれの暮らしが続くかのように感じられるキャラクターの造形でしょう。そんな良質な作品だからこそ、今後も長く愛されて古びないだろうと思わせられるのです。

<ミーテ会員さんのお声>
今年のひなまつりは実家で迎えます。孫が来るというので、母が10数年ぶりに私と姉の雛人形を飾ってくれました。娘のものはお内裏様とお雛様ふたりの親王飾りですが、私達のものは七段飾りです。娘は初めて見る七段飾りに「わぁ~~!!」と目をキラキラ。そして荷物の中から『もりのひなまつり』をひっぱり出して、「いっしょだね~」と見てました。その後一緒に「うれしいひなまつり」を歌って、「おひなさま、だ~いすき!」と満面の笑み。連れてきてあげてよかった。(2歳3か月の女の子のママ)

夫のこいでたんさんが作を、やすこさんが絵を手がけた『とんとんとめてくださいな』は、1986年、優れた児童書に贈られるオランダの銀の石筆賞を受賞しています。同じ3匹のねずみを主人公としたシリーズ作品もありますので、ぜひ読んでみてくださいね。


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