毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、イギリスの絵本作家スーザン・バーレイさんのデビュー作『わすれられないおくりもの』です。1984年初版の原書『BADGER'S PARTING GIFTS』は、直訳すると「アナグマの別れの贈り物」。日本では小川仁央さんの翻訳で1986年に出版されています。
もの知りで賢いアナグマは、みんなから頼りにされ慕われていました。でも、年老いたアナグマは、冬のはじめに死んでしまいます。アナグマの友だちは悲しみに暮れますが、春が来るとアナグマとの思い出を語り合うようになりました。そして…。
物語の序盤で、アナグマは穏やかな最期を迎えます。杖を片手に丘に登って、モグラとカエルが楽しそうにかけっこする姿を見守り、残していく友だちに向けて手紙を書いて、眠るように亡くなるのです。夢の中でアナグマは、どこまでも続く長いトンネルを颯爽と走っています。その描写には悲しみは感じられず、むしろ重たい体から解放された喜びすら伝わってきます。
悲しんだのは、残された森の仲間達です。雪深い冬の間はみな、それぞれ悲しみにふけっていたのでしょう。中でもモグラは、やりきれないほど悲しくなって、毛布をぐっしょりと濡らすほど泣きました。
やがて春が来て、外に出られるようになると、森の仲間達は互いにアナグマの思い出を語り合うようになります。アナグマから切り絵を教えてもらったこと、スケートを初めて習った時のこと、ネクタイの上手な結び方を教えてもらったこと…アナグマは一人ひとりの心の中に、大切な思い出や宝物となるような知恵と工夫を残してくれたのです。それこそがアナグマからの最後の贈り物でした。
「死」そのものではなく、残された者が大切な人の死をどう受け入れ、乗り越えていくかを、やさしく、そしてあたたかく描いた絵本です。
<ミーテ会員さんのお声>
お友だちが紹介してくれた絵本です。死をテーマにしていますが、悲しいだけではなく、前向きに考えることができます。いつもは読まないタイプの絵本なので、娘も何かしら感じるものがあったらしく、顔が緊張していました。
自分の家族(大ばあちゃん、じいちゃん、ばあちゃん)と結びつけるのはまだ難しいかもしれませんが、また機会があれば読みたいと思いました。(5歳2か月の女の子のママ)
『わすれられないおくりもの』のアナグマは、ハーウィン・オラムさんとスーザン・バーレイさんの共作『アナグマのもちよりパーティ』や『アナグマさんはごきげんななめ』にも描かれています。この2作には、まだ眼鏡もかけておらず、杖もついていない、若かりし頃のアナグマが登場します。合わせて読むと、アナグマとモグラの関係性がよくわかりますよ。
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