毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、デビッド・マッキーさんによる『ぞうのエルマー』。1968年に英国で出版、1989年に絵をすべて描きなおすなど大幅に改訂して再出版。現在日本で普及しているものは、きたむらさとしさんが1989年版を2002年に翻訳したものです。
エルマーは、パッチワークのようなカラフルな色をしたぞう。ある日のこと、みんなと同じぞう色になりたいと、ジャングルでぞう色をした木の実をからだに塗りたくって、戻ってきますが…。
絵本を読んだことのない方も、このカラフルなぞうは見たことがあるのではないでしょうか? 黄色にオレンジ、赤、ピンク、青、緑、紫、黒、白…。どの色も鮮やかでくっきりと明るく、見ているだけで気持ちが浮き立ち、明るい気分になってきます。
それは群れの他のぞう達も同じよう。エルマーの周りはいつもみんなニコニコ。ただ、それはエルマーの見た目だけではなく、ふざけることが大好きな楽しい性格が理由であることが明かされます。
ですが、エルマーはある夜「僕だけみんなと違ってる(中略)だからみんな笑うのかな、僕のこと」と思い、眠れなくなってしまうのです。
悩んだエルマーは、皆と同じぞう色になります。群れでは誰もエルマーだと気が付きません。それどころか、誰もが深刻に押し黙って身動きひとつしません。その真面目な様子がおかしくて仕方がないエルマーは、耐え切れずに「ブオオオ!」と叫んで大笑い。すると、そのふざけた様子でエルマーだとわかった他のぞう達は、今までで一番のいたずらだと一緒に大笑いするのです。
いたずらっ子のエルマーを楽しく大切な仲間だと思っていた周りのぞう達の反応に、エルマーの悩みは吹き飛びます。人と違っていていい、ありのままの自分でいいという作者の強いメッセージが伝わってきます。
1968年に発表された当初の『ぞうのエルマー』も、安西徹雄さんによって日本語に翻訳されていました(絶版)。文章は少し長く、絵のタッチは大幅に違うのですが、一番大きく違うのは、お話の最後。「エルマーの日」を祝って色とりどりの模様になったぞう達が、見開き4ページにわたってパレードをしているのです(1989年版は1見開きにたくさんのぞうが描かれています)。
ここで他のぞう達も、模様はもちろん、大きさや年齢、耳や鼻の形・長さなどが違っていることに気が付きます。そこでページを戻ってぞう色のぞう達を見返すと…その時点からそれぞれ個性をもった違うぞうとして描かれていることがわかります。エルマー以外のぞう達も皆、それぞれ違う個性をもっている。ここでもそんな作者の思いを読み取ることができるのです。
<ミーテ会員さんのお声>
親からの入園記念品として、『ぞうのエルマー』の絵本とエルマーの身長計つき写真たてをプレゼントしました。絵本は楽しく生きていければ人と違ってもいいんだよ、というメッセージを込めて。身長計は、柱に成長のあとを刻んでいきたいな~と思っています。どっちも気に入ってくれているのでよかったです♪(3歳10か月の男の子のママ)
エルマーシリーズは、BL出版から出されているものだけで現在29冊。最新刊の『エルマーとクジラ』やボードブック版の『エルマーのはじめてのかずのほん』など様々な種類があります。英国では約40冊が出版されている人気シリーズで、毎年5月末の土曜を「エルマーの日」として、書店や図書館などでイベントを催しているそうですよ。
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