イチ押し絵本情報

幾多の挑戦が生み出した幻の島(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.247)

2019年8月15日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 幾多の挑戦が生み出した幻の島

今回ご紹介する絵本は、第5回絵本にっぽん賞を受賞した川端誠さんのデビュー作『鳥の島』。1982年に文化出版局から出版され、一度は絶版となったものの1992年にリブロポートから復刊。その後1997年にBL出版から新装版が刊行されています。

鳥は身を守るために、群れをつくって暮らしていた。ある時、大空への憧れから一羽の鳥がそこを飛び立った。けれど海は広く、鳥は力尽きて海に沈んでいった。その後も何羽もの鳥が海を渡ろうとしたが…。壮大な夢を描く感動の名作。

危険を承知で群れを離れ、大空へと飛び立った最初の一羽の勇気。その鳥の遺志を継いだかのように、海を渡ろうと羽ばたいていった他の鳥達。幾多の挑戦と失敗が積もり積もって、大海原の真ん中に“鳥の島”ができました。島のおかげで、今にも力尽きそうだった鳥は最後の力を振り絞り、ゆっくり羽を休めて再び飛び立ちます。

海の底へと沈んでいった鳥達の魂が大空へと羽ばたく様は、圧巻のひと言。見開きいっぱいを埋め尽くす鳥の群像は、一羽の大きな鳥の姿に見えます。一羽一羽の無謀とも言える挑戦が、ひとつの大きな夢を叶えたのです。作者の川端誠さんはインタビューの中でこうおっしゃっています。

「常識はずれなことでも、繰り返し挑戦していけば、いつか成功することもある。一回一回のチャレンジは無駄じゃないんですよ。無数のチャレンジが支えとなって、最後の成功がある――これが、『鳥の島』で描きたかったことです」

ストーリーの奥深さもさることながら、新聞紙を原料とした自家製紙粘土で半立体の原画をつくり、それを写真で撮って制作したという絵もこの絵本の何よりの魅力のひとつ。背景に描かれている格子模様が、次第に鳥の形へと変化していくというデザインは、エッシャーの『昼と夜』という絵を見てひらめいたそうです。

川端誠さんが「もう僕はこの本は越えられないと思う」と語るほどの、渾身の一冊です。

<ミーテ会員さんのお声>
羽ばたく鳥の姿にフロンティアスピリットを感じました。お話自体は今の息子にとってはまだ難しいようでしたが、絵には興味を覚えたようで、特に後半はじっくり見ていました。たくさんの鳥が一斉に羽ばたくシーンは私も思わず息をのみました。大きくなったら、この絵本から何かを感じとってくれたらいいなと思います。(5歳4か月の男の子のママ)

『鳥の島』と『森の木』『ぴかぴかぷつん』の3冊は、川端誠さんの「ものがたり」三部作として出版されています。合わせて読んでみてくださいね。

▼川端誠さんのインタビューはこちら
「絵本を読みあう、その時間が大事」


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