イチ押し絵本情報

この上ないあくたれ猫でも大好きよ!(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.240)

2019年6月27日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 この上ないあくたれ猫でも大好きよ!

今回ご紹介する絵本は、ジャック・ガントスさんが作、ニコール・ルーベルさんが絵を手がけた『あくたれラルフ』。1976年にアメリカで出版されたロングセラーです。

セイラの猫ラルフはあくたれ猫でした。セイラはからかわれても、パーティーをだいなしにされても、セイラのお父さんを怒らせ、お母さんを悲しませるようなことをされても、ラルフのことが好きでした。ところがサーカスにでかけた時、ラルフのあくたれは度をこして、みんなを本気で怒らせてしまい…。

表紙の大きな赤い猫を見てください。お人形の首をもいで仁王立ち。表情も実にふてぶてしいこと! ラルフの悪さは留まるところを知りません。セイラの乗ったブランコがかかった木の枝を切ったり、パーティーのクッキーをすべて一口ずつ食べてしまったり。セイラだけではなくお父さんの大事なパイプでシャボン玉をし、お母さんの鳥を追いかけまわします。子ども達は度をこしたラルフのいたずらに、この後一体どうなることかとかたずを飲んで見守ることでしょう。

心配はもちろん的中します。サーカスに出かけた先で大混乱を巻き起こしてしまったラルフ。家族は怒り心頭し、ラルフをサーカスに置き去りにしてしまうのです。

この後の展開も子ども達の予想を大きく上回るのではないでしょうか。団長にこき使われ、他の動物達にもひどい目にあわされ、反抗すると、おりに入れられ食事も満足に与えられません。ラルフは逃げ出しますが、その先でもネズミにしっぽをかじられて一夜を明かし、「なまごみ熱」にかかってしまいます。すっかり弱って、目に涙を浮かべています。

そこにラルフを探してセイラが現れ、「あたし今でもあんたが大好きなのよ」と言い、家族もラルフをあたたかく迎えてくれるのです。映画が一本撮れそうなくらいの波乱万丈の物語。最後にいい子になると誓うラルフを見て子ども達はようやくほっと息をつき、それでも時に我慢しきれずにあくたれをすることを知って笑うことでしょう。

シャレにならないほどの悪さをするラルフの絵本ですが、本家アメリカではシリーズで10冊以上出ている人気作です。日本でも、PHP研究所から『あくたれラルフのたんじょうび』『あくたれラルフのハロウィン』などの続編が翻訳されています。愛され続けている最大の理由は、最初のページの一文にあるでしょう。「あくたれでも、セイラはラルフが好きでした」。

あとがきを読む限り、ジャック・ガントスさんもお姉さんも相当ないたずら坊主だったもよう。それでも「愛している」と言ってくれる母親の愛情が、このお話を書かせたと言えるでしょう。

<ミーテ会員さんのお声>
絵本の定期購読で届いた『あくたれラルフ』がブームのお兄ちゃん。昨晩の読み聞かせの最中に、ラルフが「なまごみねつ」にかかって「ぼく、さびしい」と言うシーンで「なんだか、涙が出ちゃいそう…」と一言。こっちが涙出ちゃいそうになりました。(2歳10か月と5歳7か月の男の子のママ)

「あくたれ」は「rotten」を訳したことば。元々の単語は「くさった」という意味。かなり厳しいことばを、どこか憎めなさのある「あくたれ」としたのは、石井桃子さんの名訳でしょう。


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