イチ押し絵本情報

電車の歌声に耳を傾けて(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.233)

2019年5月9日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 電車の歌声に耳を傾けて

今回ご紹介するのは、三宮麻由子さんの文、みねおみつさんの絵による絵本『でんしゃは うたう』。2004年に月刊絵本「ちいさなかがくのとも」の一冊として刊行され、2009年にハードカバー化された人気作です。

「でんしゃが まいりまあす」のアナウンスの後、駅のホームに電車が入ってきました。
かかっ かかっ すしゅーん こっ こっ
とろるるるー 「はっしゃしまあす」
ぷしっ ごろろー ぽっ
お母さんと一緒に先頭車両に乗り込んだ男の子は、運転室のドアにへばりつくようにして、その眺めを楽しみます。電車は踏切を越え、鉄橋を渡り、ポイントを踏み越えて、次の駅へと到着します。

見開き

電車が走るわずかひと駅の間の様子を、車窓からの眺めと音だけで描いた絵本です。「でんしゃが まいりまあす」「はっしゃしまあす」「おあしもとに ごちゅういくださあい」というアナウンス以外は、すべて擬音。しかも、走行音はなじみのある「がたんごとん がたんごとん」ではなく、「たたっ つつっつつ たたっ つつっつつ」とリアルに表現されています。

踏切も、一般的には「カンカンカンカン…」という音を想像しますが、この絵本では「ねん ねん ねん ねん」。この部分は文字のサイズが少しずつ大きくなっているので、それに合わせて読み聞かせの声も次第に大きくしていきましょう。電車の接近とともに大きくなっていく踏切の音が再現できます。

その他にも、鉄橋を渡る時の「ごどん どどっどど ででん だだっだだ だだん」という音や、カーブを曲がる際の「ぎぃー ぎょぎょぎょぎょ だだっ だだどどん」など、ユニークな擬音が満載です。初見だと読みにくいかと思いますが、実際に電車に乗った時の音を思い出しながら何度か練習してみると、臨場感のある読み聞かせができるようになりますよ。

先頭車両の一番前から眺める景色も、この絵本の大きな魅力のひとつ。線路沿いのお店や神社、町の人々、河原の様子など、どれも丁寧に描かれていて、実際に電車に乗っているような気分が味わえます。

<ミーテ会員さんのお声>
うたを歌っている電車を想像していたけれど、まったく違いました。電車が駅を出発してから次の駅に止まるまでが忠実に描かれています。まるで自分が電車を運転してるような気持ちになる構成で。この絵本でいう“歌う”は、電車が走っているときに聞こえる音のことだったんです。様々な音がすべて文字にしてありました。読むのにはなかなか苦労します。でも、読みながら「そうそう! こんな音してたなぁ」なんて懐かしく思い出しました。(1歳0か月と7歳11か月の男の子のママ)

作者の三宮麻由子さんは、4歳の時に視力を失われたそうですが、その研ぎ澄まされた感性で、エッセイや絵本など様々な作品を生み出されています。『でんしゃはうたう』を読み終えたらぜひ『おいしい おと』『かぜ フーホッホ』も手にとって、三宮さんならではの豊かな世界を感じてみてくださいね。


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