イチ押し絵本情報

泣き虫の新入園生をあたたかく見守る(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.228)

2019年4月4日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 泣き虫の新入園生をあたたかく見守る

今回ご紹介する絵本は、長崎源之助さんが作、西村繁男さんが絵を手がけた『なきむしようちえん』。1983年の出版以来、入園前後の親子に共感をもって愛読され続けているロングセラーです。

今日は幼稚園の入園式です。おやおや、門の所で泣いている子がいますよ。あれは、みゆきちゃん。みゆきちゃんは、毎日泣いてばかりです。ヤギは追いかけてくるし、畑で汚れるのも嫌だし、園の林もロープウェイも怖いから嫌! でも先生がひざに乗せてくれたウサギは、やわらかであたたかく、ちっとも怖いことありませんでした…。

見開き

知らない場所、知らない大人、知らない子ども達、知らない生き物、知らない遊具に知らないイベント。入園したての子ども達は、知らないことばかりに囲まれています。困ったことがあっても、ママもパパもいません。子ども達はみんな、多寡はあれど、毎日不安で怖がって泣いてばかりいる「みゆきちゃん」なのです。だから、読み聞かせを聞く子ども達は真剣そのもの。みゆきちゃんがどうなるのか、どうするのか、息をつめて成り行きを見守るのです。

そんなみゆきちゃんが幼稚園で初めてにっこりするのが、ウサギのシーンです。大人しくひざの上に座るウサギのあたたかさは、園の先生や友だちのあたたかさ。みゆきちゃんの笑顔を見て、お話を聞く子ども達もほっと息をつき、表情がやわらかくなってきます。

ウサギのおかげで園での生活に慣れ始めるみゆきちゃん。慣れると同時に、絵の中からみゆきちゃんを探すのが難しくなっていきます。他の子達と同じく、元気いっぱい、真っ黒になって遊ぶようになるからです。お泊り会のキャンプファイヤーのシーンでは、一体どこにいるのでしょう。髪をふたつにわけて結っているのはみゆきちゃんだけだから…。

泣き虫だったみゆきちゃんは、ゆっくりと1年かけて、お姉さんに成長していきます。安堵のため息と笑いと共に話を聞き終わり、パタンと閉じた絵本の表紙を見て、「あ!」と気づく子がいます。表紙のみゆきちゃんは、あんなに怖がっていたロープウエーに乗ってにっこり笑顔。もう大丈夫です。そして子ども達の中にあった園生活への不安も、ほんの少しぬぐわれたはず。毎年この時期、新生活に緊張し、不安を抱えた子ども達にそっと寄り添い、あたたかく見守り続けてくれる絵本なのです。

<ミーテ会員さんのお声>
最近のお気に入りは、『なきむしようちえん』。長女がひとり読みをしているのだけれど、前に私が読んであげた時に言ったことまで再現していた! 裸の子ども達の絵を見て「みんな水着のあとがついているねえ」だって。

この絵本は私にとってもなかなか面白かった。大きい園庭の周りには林や畑があり、ヤギやウサギを飼っていて、焼き芋会やお泊り会に肝試し大会も幼稚園でやっている。私が子どもの頃にはよくある光景だったけれど、今は、特に我が家がある住宅密集地の保育園では到底ありえないことばかり。お姉ちゃんはどんな風に想像しながら読んでいるのかな。(10か月と3歳9か月の女の子のママ)

園でお泊り会をしたり、園内に林や畑があったり、ヤギやウサギを飼っていたり、子ども達が自然の中でたっぷりと遊べるこの幼稚園。横浜市にある実在の幼稚園がモデルになっているそうですよ。

▼西村繁男さんのインタビューはこちら
「親子一緒に絵本の中で遊んでもらいたい」


ページトップへ

無料会員登録後は、過去の「絵本子育て相談室」など、
様々な絵本情報が読み放題!
ぜひミーテにご登録ください♪