イチ押し絵本情報

「今日は何の日?」から始まる手紙探し遊び(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.192)

2018年7月19日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 「今日は何の日?」から始まる手紙探し遊び

今回ご紹介する絵本は、瀬田貞二さんが文、林明子さんが絵を手掛けた『きょうはなんのひ?』。1979年に出版された、二世代に愛され続けているロングセラー絵本です。

「お母さん、今日は何の日だか知ってるの? 知らなきゃ階段 三段目」。おかあさんは階段の三段目に手紙を見つけます。まみこがしかけた手紙探し。家中に隠されたお手紙をたどると、果たして何にたどり着くのでしょう?

見開き

まずじっくり表紙の絵を見てください。夕飯をとるおとうさんと、お茶をいれてあげるおかあさん。ふたりに見つからないように、そっと赤い糸がついた白い紙をこっそり運ぶ女の子。そして表紙を開くとトビラでは、スーツのポケットに何かを入れています。絵をじっくり読む子ども達は、もう遊びが始まっていることに気づくでしょう。

主人公のまみこは、謎かけのうたを残して学校に行ってしまいます。読者は、まみこのお母さんと一緒に手紙探しにかかります。手紙のヒントを読み解きながら家中を探し回り、最後には、会社にいるお父さんまで巻き込んで、手紙探しは進むのです。

謎かけと小さな木が描かれた10枚の手紙、たどり着いた先にあるプレゼントの箱。この箱にも、手紙の枚数にも、小さな木にも、ちゃんと意味があって、さらなる種明かしが待っているのです。

さてこのお話、通常の絵本とはちょっと違います。なんと物語が始まると同時に主人公がいなくなってしまうのです。ただし、まみこがいないはずの家も物語も、まみこの気配で満ち満ちています。

どんな絵本やものが好きなのか、お母さんといつもどのようなことをしているのか、丁寧に描きこまれた絵、手紙、お母さんの反応から、浮かび上がってきます。お母さんもお父さんも、まみこの遊びに丁寧に付き合うだけではなく、さらにまみこが喜ぶサプライズまで用意していて、家族が互いを大事に思い合っていることがうかがわれます。林明子さんの描く、冬のやわらかい日差しに照らされたような黄色が基調の部屋の様子は、そんな家族のあたたかさを象徴しているようです。

まみこのしかけた謎かけ同様、謎かけの物語の中に入れ子になって、互いに思い合う、ごく普通の幸せな家族の姿が描かれている。それこそが、この物語が世代を超えて愛され続けている理由なのでしょう。

<ミーテ会員さんのお声>
買い物から帰宅すると、娘からのお手紙が机の上にありました。どうやらパパと『きょうはなんのひ?』を読んだようで、お手紙のかくれんぼが始まりました。「ママが洋服を選ぶ時、よく座る椅子」→「洗面台の下」などなどと、たどたどしい文字を読み解いて、無事目的のものを発見!

ひとりで一生懸命書いて、隠している姿が思い浮かんで、思わず笑みがこぼれてしまいました。それにしても、私の様子や動きを良く観察しているんだなぁ。普段の行いも気を付けないと!(笑) (4歳9か月の女の子のママ)

お話の途中で、まみこが好きな絵本として登場するのが、『マドレーヌといぬ』。この絵本の文を手掛けた瀬田貞二さんが翻訳された絵本です。「犬」もこの物語の大事なキーワード。まみこが犬を特別に思っていることが、絵本のあちこちから垣間見えますよ。


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