イチ押し絵本情報

文字以上に絵が語る、イギリスの古典的名作(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.185)

2018年5月31日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 文字以上に絵が語る、イギリスの古典的名作

今回ご紹介する絵本は、イギリスの作家ウィリアム・ニコルソンさんによるロングセラー『かしこいビル』です。原書の初版は1926年。日本では松岡享子さんと吉田新一さんの翻訳で、1982年にペンギン社から出版されています。

おばさんから「遊びにいらっしゃい」と招待の手紙をもらったメリー。さっそく返事を書いて、旅の支度を始めますが、あれもこれもと何度もトランクに荷物を詰め直しているうちに、大事な兵隊人形のビルを入れ忘れて出発してしまいました。置いてけぼりにされたビルは、涙を流して打ちひしがれますが、すぐに起き上がり、メリーの乗る汽車を追いかけて走り始めます。

見開き

92年も前に生まれた古典絵本ですが、その抜群の構成力で、今も多くの親子に愛されている名作です。作者のウィリアム・ニコルソンさんは、ロートレックの影響を受け、イギリスで初めて商業美術のポスターを制作した画家、肖像画家。文・絵ともに自作した絵本はこの『かしこいビル』と『ふたごのかいぞく』の2作のみで、いずれも愛娘メリーのためにつくられたものだそうです。

文章は短く、ストーリーも非常にシンプルですが、巻末の解説で松岡享子さんと吉田新一さんが「物語の流れを絵がとてもよく伝えている絵本」「絵をたんねんに読むと、いっそう楽しさが増す絵本」と書かれている通り、文字以上に絵が多くを語っています。メリーが愛用のおもちゃ類を入れたり出したりして荷造りに苦心する場面では、文章は「まず、こうつめてみました」「こうしてみて、それから」だけ。読者は絵の中で、ビルが入れ忘れられていることに気づきます。

中盤の「なんと!!」「なんと!!!」という文字だけの2ページで一気に盛り上げて、物語は怒涛のラストへ。涙、涙のビルがめげずに立ち上がり汽車を追いかけるシーンでは、あきらめない心意気がおかしくもまっすぐに描かれており、自然と応援したくなります。

<ミーテ会員さんのお声>
保育園で薦められた絵本だったけれど、絵がかなりクラシックな感じなので、最初は何となくとっつきにくく感じていました。でも、一度じっくり読み聞かせしてみると、息子がハマった! 今では下の娘も大好きな絵本。

実際にはこんなこと絶対ないでしょっていうお話なのですが、そのままその世界に入り込めて、最後によかった~って一緒に思えちゃうから不思議。あと、文字数が少なくて、気楽に読めるのもうれしい(^^)(6歳1か月の男の子と、2歳7か月の女の子のママ)

メリーと感動の再会を果たす幸せいっぱいのラストは、裏表紙まで続いているので、くれぐれもお見逃しなく。表紙と本文の描き文字は、書体デザイナー、グラフィックデザイナーの稲田茂さんによるもので、古典的名作にぴったりの味わいを醸し出しています。


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