毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。
今回ご紹介する絵本は、川端誠さんの『ばけものつかい』。1994年初版の、川端誠さんの落語絵本シリーズ第1巻です。
ばけものが出ると噂の古いお屋敷へ引っ越したご隠居さん。さて夜になると、庭の障子がスーッと開いて、一つ目小僧が現れました。奉公人はおばけを怖がって辞めてしまいましたが、ご隠居さんは平気なもの。せっかく来たからと、家事やら庭仕事やらを申しつけて…。
人づかいが荒い、人づかいが荒いと、奉公人から言われて不満げなご隠居さん。ですが、その後登場する一つ目小僧へ申しつけたことがこちら。米炊き、おかずの用意、後片付け、拭き掃除、ふとん敷き…。その間細かく口をはさんでいることは、ご隠居さんの表情から想像できます。そして、最後に肩をもませながら「明日はな、もう少し早く出てこいよ」。お見事というしかない荒い人づかいです。
次に登場するろくろっ首も大入道も、散々こき使います。ばけもの達は、もうクタクタ。疲れ切って「おひまをいただきたい」と、オチにつながります。
何よりこのシリーズを特徴づけているのが、耳に心地の良い、流れのあることばでしょう。一息で読みやすいところで句読点が来て、めくりと間合いがピタッとはまっています。書いてある通り読めば、自然と名調子に。作者の川端誠さんは、子どもの頃から落語に親しんで来たそう。耳から噺を聞いて想像を膨らませて楽しむ落語は、読み聞かせと相性が悪いはずがありません。ひとり読みをしているお子さんにも、「今日はママが」と言って読んであげてほしい絵本です。
ただ子どもにとって、わかりやすい話というわけではないでしょう。舞台は江戸時代。「ごいんきょ」「ほうこう人」「ひまをとる」などなど、子どもには馴染みのないことばが並びます。ばけものが申しつけられる用事も、子ども達はわかるようなわからないような感じで聞いているのではないでしょうか? それでも、そんなことをものともせず、子ども達は目をキラキラさせて話の続きを待っているのです。
それは、落語という話芸によって鍛えられた物語であることはもちろんでしょうが、「落語」と「絵本」をよく知る作者だからこその、工夫があります。本来の噺は、タヌキがやってきて「わたくしも方々化けて出ますが、あなた様のように化け物づかいの荒いお方はおりません」と言うのがオチだそう。絵本では視覚に訴えるため、最後にタヌキが化けて出ていることを明かすオチにしていると、あとがきにあります。ことばや絵で、理解を助ける丁寧な工夫をしているから、子ども達は安心して、噺の世界に没頭できるのでしょう。
<ミーテ会員さんのお声>
「子ども寄席」に家族4人で行ってきました♪ 幼児はなかなか生で聞く機会がないので、貴重な経験です。演目は「ばけものつかい」と「時そば」。軽快でノリノリの落語に、たくさんたくさん笑いました。上の娘は「面白かった~。また来たいね」と言い、家に帰ってからも自分で『ばけものつかい』の絵本を熱心に読んでいました♪ 下の子は、まだ長時間集中して聞くのは無理…。でもおうちで読んだ時は、ママの顔見て笑ってくれたもんね。(1歳3か月と5歳の女の子のママ)
他にもシリーズは15冊出ていて、中でも人気の『じゅげむ』や『たがや』などは、噺を絵本向けに大胆に脚色したそう。ミーテカフェインタビューでは、川端さんから落語絵本の制作秘話もうかがっているので、ぜひご一読を。
▼川端誠さんのインタビューはこちら
「絵本を読み合う その時間が大事」
(落語絵本については、後編でご紹介)
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