イチ押し絵本情報

雨の一日を叙情豊かに描く字のない絵本(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.134)

2017年6月1日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 雨の一日を叙情豊かに描く字のない絵本

今回ご紹介する絵本は、4月に亡くなった米国の絵本作家ピーター・スピアーさんの『雨、あめ』。

雨が降ってきました。姉弟はレインコートに帽子、長靴に着替え、傘をさして外に出かけます。水たまりに広がる波紋、電線や蜘蛛の巣に光る雨粒、雨どいからごうごう流れる水、生き生きとする水辺の生き物。そして激しい雨から逃げ戻った時の家の暖かさ。いつもと違う雨の日の景色を生き生きと描いた、字のない絵本です。

見開き

この絵本の魅力は表紙にすべてあらわれています。降りしきる雨の中、鮮やかな色のかっぱを着た女の子と男の子が、犬と一緒に笑顔でこちらを見ています。大人にとってはゆううつな雨ですが、子どもにとっては違うのです。

姉弟は雨具を身に着けると、雨の中を自由自在に遊び回ります。雨が降ることで、見慣れた庭の砂場や雨どい、その辺に置かれた手押し車さえ、いつもとは違う表情を見せます。思いがけない場所に生き物が雨宿りをし、蜘蛛の巣も思わず見とれる美しさ。細部を見逃さない観察力で、雨の日の景色を描き切っています。

雨が一段と激しくなり、逃げ帰った家の中が実にあたたかそう。家の内と外のコントラストが見事です。映画を思わせる場面転換や見開きを使った大胆なカット、自在なズームインにズームアウト。漫画のようなテンポのよいコマ割り。スピアーさんの特徴的な技法が、子どもの自在な遊びぶりと共に、絵本に躍動感を与え、忘れがたい一冊として記憶に残るのでしょう。

<ミーテ会員さんのお声>
今週は、雨、雨、雨。そんな時であったのが『雨、あめ』。何て、雨をすてきに変えてくれる魔法の絵本だろうと、トキメキました。ことばのない絵本で、1枚1枚の絵を見ているだけで心が躍ります。雨をこんなにも楽しめる子どもって天才! こんな風に雨の散歩を楽しみたいけれど、息子はレインコートが嫌い。傘は大好きだけど、持ってもささないし 歩かないし、挙句の果てにおんぶ…となるので来年のお楽しみにしよう。雨上がりにちょっとだけ水たまりで遊ばせてあげるかな。(2歳2か月の男の子と10歳1か月の女の子のママ)

スピアーさんは『ノアのはこ船』でコールデコット賞を受賞しています。こちらも字のない絵本。小さい子から楽しめるのが、『ばしん!ばん!どかん!』。さまざまな音の表現を、渡辺茂男さんの訳で味わえる秀作です。


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