イチ押し絵本情報

消防車の活躍を描く古典的名作(ロングセラー&名作ピックアップ Vol.71)

2016年3月10日

毎週木曜日は、ママ世代にとっても懐かしい、世代を超えたロングセラー&名作絵本をご紹介します。

 消防車の活躍を描く古典的名作

今回ご紹介する絵本は、渡辺茂男さんの文、山本忠敬さんの絵による人気作『しょうぼうじどうしゃ じぷた』。1966年に「こどものとも傑作集」として市販本化されてから今年で50年。今もなお版を重ねる、200万部突破のロングセラーです。2004年には『Jeeper,the Fire Engine』のタイトルで英訳版も出版されています。

舞台はある町の消防署。はしご車ののっぽくん、高圧者のぱんぷくん、救急車のいちもくさんは、大きな火事で大活躍するので、子ども達にも大人気です。でも、消防署のすみっこにいる、古いジープを改良した小さな消防車のじぷたのことは、誰も気にかけません。とっても働き者なのに、いつも「ちびっこ」扱いされて、じぷたは自信を失いかけていました。

でもそんな矢先、道の狭い山の中で火事が起こります。放っておけば山火事になってしまいます。そこで出動を命じられたのは、なんとじぷたでした。

見開き

この絵本の一番の魅力は、それぞれの特性を生かした見事なキャラ分けでしょう。「のっぽくん」「ぱんぷくん」「いちもくさん」「じぷた」という名前からも、それぞれの個性がわかります。著書『心に緑の種をまく』(新潮社)の中で作者の渡辺茂男さんは、「じぷたは、ひ弱で体がとても小さく、いつでも他人に後れをとっていた幼い自分の分身でしたし、のっぽくんと、ぱんぷくんと、いちもくさんは、強くたくましかった遊び友だちの分身でした」と物語づくりを振り返られています。

読み手となる子ども達も、最初は大きくて立派なのっぽくんやぱんぷくんに憧れるかもしれません。でも小さなじぷたが出動するシーンを見れば、自然とじぷたに感情移入していくことでしょう。狭い山道を登っていくじぷたの勇ましいこと! 乗りもの絵本の第一人者、山本忠敬さんの描く消防車や救急車は細部までリアリティがあり、過度な擬人化はされていません。しいて言えばヘッドライトが何となく目に見える程度。でもお話の世界にどっぷりと浸かっていれば、じぷた達の生き生きとした表情が見えてくるはずです。

<ミーテ会員さんのお声>
息子が暗唱するほど読み込んでいます。先日、救急車を見た時に、「いちもくさんだねぇ」と息子。彼は絵本に出てくる固有名詞を言っただけなのですが、近くにいたおばさまが「“いちもくさん”なんて知ってるの?」と驚いた表情。意味も伝えなきゃなぁ。(2歳6か月の男の子のママ)

作者の渡辺茂男さんは物語を書くにあたって、消防署や消防自動車の製造工場、神宮外苑で催された出初め式での消防デモンストレーションなどを取材されたそうです。また絵の山本忠敬さんも、当時少なくなっていたじぷたのような小型消防車をひとめ見ようと、埼玉県の上尾消防団まで足を運ばれたとか。本物をじっくり見た上でつくられた一冊だからこそ、多くの子ども達に愛されてきたのでしょう。

今年は山本忠敬さんの生誕100年ということで、かつて人気を博した『でんしゃがはしる』『とっきゅうでんしゃ あつまれ』の2冊が限定復刊されています。山本さんの愛情あふれるタッチで描かれたリアルな乗りものの数々、あわせて楽しんでみてはいかがでしょうか。


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