絵本作家インタビュー

vol.124 絵本作家 塚本やすしさん(後編)

絵本作家さんや絵本の専門家の方々に、絵本についての思いやこだわりを語っていただく「ミーテカフェインタビュー」。今回は、『このすしなあに』『はしれ!やきにくん』など、個性的な絵本を発表し続けている塚本やすしさんの登場です。作品のお話はもちろん、ふたりのお子さんのパパでもある塚本さんの、ユニークな子育てエピソードなども聞かせていただきました。
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絵本作家・塚本やすし

塚本 やすし(つかもと やすし)

1965年、東京都墨田区生まれ。幼少の頃より独学で絵を学び、路上でもチラシの裏でもなんでも描きまくる。玄光社ザ・チョイスで入選し、絵描きの道へ。おもな絵本の作品に『このすしなあに』『はしれ!やきにくん』、谷川俊太郎氏作による『ふたり★おなじ星のうえで』『そのこ』などがある。さらに『小説新潮』の表紙絵、重松清『とんび』(東京新聞連載)『くちぶえ番長』(新潮社)の挿絵も手がけるほか、エッセイ『猫とスカイツリー 下町ぶらぶら散歩道』(亜紀書房)など、多彩に活躍中。
塚本やすし オフィシャルブログ http://ameblo.jp/tsukamotoyasushi/

子どもにはうるさく言わないけど、ポイントは抑えて

僕は東京・墨田区の下町で生まれ育って、今も住んでいます。飽きちゃうんで、すぐ引っ越しをするんですけど、ずっと墨田区なんです。うちからは東京スカイツリーがよく見えますね。子どもが小さい頃は、よく近所の子育て仲間数組がうちに集まって遊んでいました。しょっちゅう、子どもの友だちがうちに出入りしているような、賑やかな家でした。

うちは妻がプロの調理師なので、家にある食器や調理器具も、プロが使う業務用を置いているんです。高くてカッコつけたものには興味がなくて、子どもにも本物に触れてもらいたいと思って、よく合羽橋(東京にある日本一の食品道具街)で買っています。

子どもが小学校の運動会のとき、普通の弁当を持って行くんじゃつまらないから、かつ丼をどんぶりに入れて、出前に使うおかもちに入れて持って行ったんですよ(笑) そしたら周りには受けたけど、息子には「2度とやめてくれない?」と言われました……。

それ以来、「弁当つくってあげようか?」と言っても、「変なことやるからいい」と言われてしまいました。そんなかんじで、ちょっとアナーキーな(?)子育てをしてきたけど、子どもには常に好奇心を持ってもらわないと、つまらない人間になってしまうと思って、小さい頃から色々な経験をさせてきましたね。

子どもを自由にはするけど、道がソレそうになったらチョイと軌道修正はしてあげる。うるさいことは言わないけど、叱るときはポイントをつかんで叱る。そのためには、よく子どもを見ていること。結局は愛情をかけることですよね。

あと、「勉強しなさい」は絶対言いませんでしたね。何故かと言うと、自分が言われて嫌だったから。僕は小学生の頃から、将来子どもを持ったら、これは言うのをやめようとノートに書いていたほど。だけど、その話をしたら長男に「少しは言ってほしかった」と言われましたけどね(笑)

読み聞かせはそのお父さんならではの武器を使って

塚本 やすし

子どもが小さい頃は仕事が忙しくて、平日は子どもが起きている時間に帰れないことがほとんどだったので、あまり絵本の読み聞かせをしてあげられる時間がありませんでした。

子どもが最初に見る本が絵本であって、絵本を読むと想像力も伸びていくと思うので、親が上手にチョイスして、子どもに読んであげるのがいいと思います。最近は、自分の絵本を読み聞かせする機会がありますが、読み聞かせをするときに気をつけているのは、大きい声ではっきりと読むこと。

あとはいかに目の前の子どもたちを楽しませてあげるか、という気持ちが大切だと思っています。子どもたちに「知ってるー」なんて対等な言葉で言われるけど、対等に接して、絵本で遊んであげている感覚です。

お父さんが自分の子どもに絵本を読んであげるときは、そのお父さん流の、例えば方言を使って読んでもいいでしょうし、結末を変えてしまってもいいでしょうし、あるいは逆から読んでみてもいいでしょうし、想像力を働かせて読んであげるといいと思います。

そうそう絵本だけじゃなくて、たまにはスーパーのチラシを読むのも楽しいんじゃないかな? 「トマト、200円! レタス、300円!」とか(笑)  いや、結構子どもに受けるんですよ!

絵本でも、楽しいもの、悲しいもの、バカバカしいもの、ストーリーものとか、色々なものを用意して、そのときの気分で読んであげるといいですね。あるいは子どもを叱ったり、しつけや注意をしたりするときに利用してもいいと思いますよ。

そして、お父さんの職業によっても、色んな読ませ方があると思うんです。例えばお父さんが弁護士だったら、「法律的には、これは間違っているよ」と言ったり、警察官だったら、「こういうときは逮捕するぞ」と言ったりね。そのお父さんならではの武器を使って読んであげるのがいいんじゃないかな。お父さんを尊敬したりもするでしょうから。

100冊絵本を出すことが目標!

そのこ

▲アフリカ・ガーナでカカオを収穫している「そのこ」と日本にいる「ぼく」との日常を描いた谷川俊太郎さんの詩を絵本にした『そのこ』(晶文社)

絵本作家をはじめるとき、「100冊絵本を出すことを目標」にして、当時は無謀な目標だと思っていたけど、このペースだと数年後に目標が達成できそうです。自分は子どもの頃から絵が描くことが大好きで、それを職業にすることができて、今自由に描かせてもらえているということは、すごく運が良いと思っています。

これからも子どもたちに楽しんでもらえる絵本を出していきたいですし、社会問題を扱った絵本、例えば『だいじょうぶだよ、おばあちゃん』みたいな介護の絵本や、谷川俊太郎さんとの絵本『そのこ』みたいな、ヒューマンなものも出していきたいですね。

そのほか戦争をテーマにしたものとか、それこそ戦争の語り部がどんどんいなくなっていくので、今のゲーム世代の子どもたちに、戦争というものを伝えることができる、リアルな絵本も出してみたい。

子育て中の余裕がなくて、イライラした気持ちになってしまうお母さんに向けた絵本も出してみたいですね。子どもが小さいうちは、本当に大変だと思います。だからこそ、絵本を使って、親子のコミュニケーションを上手にとってもらえたらと願っています。

そのためにも、子どもには絵本をどんどん与えてあげてほしい。だから僕は絵本作家として、いい絵本をたくさん提供していきたい、という思いがあります。


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