今回は、『あがりめさがりめ』などのわらべうた絵本や『ママだいすき』などでおなじみの絵本作家・ましませつこさんがご登場。伝統的な色彩や形の美しさと現代的なセンスが合わさったあたたかな絵は、どうやって生み出されてきたのでしょうか? 山形での子ども時代や「わらべうた」との出合い、まど・みちおさんとの思い出、制作エピソードなどを、季節の花が咲く素敵なご自宅で伺いました。4週連続でお届けします。
1937年、山形県鶴岡市生まれ。広告デザインの仕事の後、子どもの本を手掛けるようになる。『わらべうた』でデビュー。主な作品に『うめぼしさんのうた』(以上、福音館書店)、『ママ だいすき』(作:まど・みちお)、『あがりめさがりめ』、『ととけっこう よがあけた』(案:こばやしえみこ、以上こぐま社)など。最新刊は、『うめぼしさん』(作:かんざわとしこ、こぐま社)。
▲たまご焼きが大好きな王さま。小屋にぎゅうぎゅうづめの鶏をかわいそうに思って鍵を開けると…。『おしゃべりなたまごやき』(作:寺村輝夫、絵:長新太、福音館書店)
高校を出て進路を考えた時、「私、絵ばっかり描いて、どうすればいいの!?」って言ったら、父が「お前は小さい時から絵が好きなんだから、美術学校だってあるよ」って。それで女子美術大学の図案科にすすんだんです。
ただ、絵本を描く人になるとは思ってなかった。卒業した後は、広告代理店に入って、デパートの若い人向けのパンフレットをつくっていたの。デザインの仕事で夜遅くまでかかったのよね。でも女の子が遅くまで会社に残っていると労働組合から怒られる時代だったから、点検の人が来ると、道具を持って逃げてた。一番思い出すのは、クリスマスイブ。みんなデートなんかして楽しそうなのに、何で私、新宿のホームにいるのかなぁって(笑)
そんな頃、新宿の紀伊国屋で、福音館書店の「こどものとも」の長新太さんの絵本を見たの。『がんばれ さるの さらんくん』と『おしゃべりなたまごやき』。『三びきのライオンのこ』もあったかな? それを見て、 子どもの本を描く仕事は自由でいいな、うらやましいと思ったの。私、自由に育っているものだから(笑)
ミーテでは、スペシャルインタビューの他にも、子育てに絵本を取り入れている先輩ママ・パパのお声もたくさんご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
ましませつこさんのインタビューはまだまだ続きます。
▲「おおさむこさむ」など13篇を収録『わらべうた』(品切れ重版未定)。同じ展覧会の出品作からつくられた『うめぼしさんのうた』(以上福音館書店)は、「かごめかごめ」など16篇。
やっと正月に休みをとって実家に帰ったら、タイムスリップしたみたいな気持ちになったのよね。茶の間に火鉢があって、砂糖壺があって…。その時ふと、砂糖壺や鉄瓶、障子みたいなものもかわいいじゃないって、気がついたのね。当時は、無駄がなくて使いやすくて、形もシンプルというのがグッドデザインの時代だったんだけどね。
蔵ならもっと面白いものがあるかな、と思ったの。中にはタンスが7つも並んでいてね。窓の明かりを頼りに開けたら、色とりどりの子どもの着物が出てきたのよ。つぎはぎだけど「こんな華やかなの着てたの!?」って驚いたわ。もっとよく見ようと母屋に戻ってラジオをつけたら、今度は子ども達が「はないちもんめ」を歌っていた。雪の上であんな着物着て、こんなうた歌って、さぞかしかわいかっただろうなって。それでまず、日本宣伝美術会の展覧会に、「わらべうた」をテーマしたレコードジャケットを出品したの。
その絵を会社に持って行って、私、絵本描きたいのって話していたら、たまたま自分の母親が石井桃子さんと大学が一緒という方がいらしたの。「この絵が絵本に向くかどうか見せるだけなら」って。その後福音館書店から連絡があって、絵本になった。だからね、若い人が何かしたいって思ったら、「したい、したい、したい!」って言っていいと思うのよね。本当に好きなことならね。
ましませつこさんのインタビューはまだまだ続きます。