みんなの推し絵本!

vol.44 キューライスさんの推し絵本

vol.44 キューライスさんの推し絵本

キューライスさん

vol.44 キューライスさんの推し絵本

思い出の一冊、大好きな一冊、渾身の一冊など、とっておきの“推し絵本”を紹介してもらうインタビュー「みんなの推し絵本!」。今回は、第1回みんなのよみきかせ絵本大賞の「園児さんと先生でえらぶ!よみきかせ絵本部門」で大賞を受賞した『ニンジンジン』の作者で、絵本作家・漫画家のキューライスさんにご登場いただきます。

ニンジンとウサギの永遠の追いかけっこ

先がふたつに分かれていて、足の生えたように見えるニンジンってありますよね。あの足がちゃんと機能して歩き出したら面白いなと、昔から思っていたんです。そこから「あるくニンジン ニンジンジン」というフレーズができて、ニンジンジンのキャラクターが生まれました。

ストーリーについては、アメリカのカートゥーン「ワイリー・コヨーテとロード・ランナー」みたいな、絶対に捕まえられないものを追いかけ続けるというのが昔から好きだったので、そんな永遠の追いかけっこの話にできないかと思ったんですね。それで、追いかける側としてウサギのキャラクターを2匹設定して、様々な手法でニンジンジンを捕まえようとするウサギたちに対して、ニンジンジンが意外性のあるかいくぐり方をしていく、という展開にしました。

ニンジンジンはただ逃げるのではなくて、ヘビみたいにニュルニュルとよけたり、葉っぱを振り回してヘリコプターみたいに飛んだりと、ありえないけど、あったら面白いなという方法でウサギたちを回避していきます。その“ありえなさ”を楽しんでもらえたらうれしいですね。

長新太さんの絵本に影響を受けた大学時代

僕の絵本や漫画はシュールとかナンセンスと言われることが多いですが、それは長新太さんの影響が大きいのではと感じています。

長さんの絵本には大学時代に出合いました。大学の授業で絵本をつくる機会があって、子どものとき以来久しぶりにまた絵本を読むようになったんですね。その頃に読んで衝撃を受けたのが、長新太さんの絵本です。

特に好きなのは、「キャベツくん」シリーズや『ゴムあたまポンたろう』。『つきよのキャベツくん』では、道の向こうからトンカツが歩いてきたり、森の中からトンカツ・ソースが走ってきたりするんですよ。そういう何でもありなところがすごいなと。

『ムニャムニャゆきのバス』は、三角定規や徳川家康、目玉焼きなどを乗せたバスが、ムニャムニャを目指して走るという絵本なんですが、最後のページには、「『ムニャムニャ』は、どんなとこだって?(中略)わからないから、おもしろいんじゃないの。そんなこと きいては、イケマセン イケマセン」なんて書いてあるんです。本当に自由で、絵本ってなんて楽しいんだ!と思いましたね。

『ちへいせんのみえるところ』では、文章は「でました」だけで、ページをめくるといろいろなものが、脈絡もなく現れるんです。それだけでとにかく面白い。大学時代は長さんの絵本に影響を受けすぎて、ソースの海にアジフライが泳いでいる絵本とか、島で暮らすカツが夕方に油の銭湯に入る絵本など、長新太さんっぽい絵本を描きまくっていました。

一番の喜びは子どもたちの笑顔

『ぼくはおこった』は、小さいときに大好きだった絵本です。男の子が怒ると雷が鳴って、嵐が巻き起こって、町がめちゃくちゃになって、最終的には地球が真っぷたつに割れてしまう、という話で。大人になってから読み直してみたら、嵐が吹き荒れるシーンで、大きなたばこの看板からたばこが一本一本、宙に散らばる様子が描かれていて、ああ、こういう細かい遊び心のある絵が好きだったよなあと、改めて思い直しました。地球が割れるところも、卵の殻が割れるような描写をしていて、そこがまた好きだったよなと思い出したんですよね。

子どもは絵本の絵を隅々まで見ているということが、自分の経験からもわかっているので、絵本を描くときは画面の端の方に変なキャラクターを描くことも多いです。それを見つけた子どもが、読み聞かせしてくれているお母さんやお父さんに「ここにこんなのいるよ」と教えてあげる、みたいなコミュニケーションが生まれたらうれしいですね。

絵本作家の仕事をしていて一番よかったと思えるのは、子どもたちに喜んでもらえること。サイン会などで子どもたちからもらった手紙や絵は、机の前のコルクボードに貼って、ときどき見ては励みにしています。

僕自身、子ども時代に『ぐりとぐら』『三びきのやぎのがらがらどん』といった名作絵本の数々を読んで育ちました。自分もいつか、そんな誰もが知っている絵本を一冊でもいいからつくれたらいいなと思っています。

ミーテ プレゼント情報

ニンジンジン

キューライスさんの絵本『ニンジンジン』ミーテ会員3名様に抽選でプレゼントします。

※ミーテ会員登録がまだの方は、登録後、ご応募ください。会員登録はこちら

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応募期間
11月25日(火)~12月8日(月)

プロフィール

キューライスさん

キューライス

1985年、栃木県生まれ。東京造形大学アニメーション専攻一期生、同大学院修了。東北新社企画演出部勤務を経て、現在は漫画家、イラストレーター、演出家、アニメーション作家、絵本作家として活動している。主な絵本に「ドン・ウッサ」シリーズ、『シカしかいない』(いずれも白泉社)、「ボンバルボンの絵本」シリーズ(小学館)、『あっゴジラ』(朝日新聞出版)、『ウサギのおやっさんのカレーやさん』(マガジンハウス)などがある。

https://qrais.blog.jp/


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