vol.24はしのえみさんの推し絵本
思い出の一冊、大好きな一冊、渾身の一冊など、とっておきの“推し絵本”を紹介してもらうインタビュー「みんなの推し絵本!」。今回は小学生のお子さんの子育て中のママでもあるタレント・はしのえみさんにご登場いただきます。
私には小学2年生の娘がいるのですが、絵本を頻繁に読むようになったのは、結構最近なんです。毎日寝る前に娘と布団の中で、私が一冊読んで、娘が一冊読んでから寝るというのが習慣です。小さい頃も読み聞かせていましたが、今が一番読んでいる感じがあります。
きっかけは娘が寝るのが苦手だったこと。母としては学校の時間を考えると早く寝かせたい。でも寝る時間になっても、娘は「全然眠くない」「寝るのがつらい」「寝るのが苦手で悲しくなってきた」と落ち込んでしまって…。ふと、私も絵本が好きだったし、寝る前に読み聞かせしたらどうかなとやってみたら、スーッと眠ってくれたんですよね。絵本を読む間に気持ちが静まったり、寝るための心の準備ができたりするのかもしれません。特に「ああ、楽しかった」と明るい気持ちで寝られるようになったことがよかったなと。私も幸せな時間を過ごせて、思いがけず理想的な形になりました。
中でもくり返し読んだのが、『しろいうさぎとくろいうさぎ』です。うさぎのふわふわした毛並みまで感じられる絵が親子で大好きです。我が家には真っ黒な犬がいるんですが、このうさぎみたいな表情をすることがあるんです。驚いた顔や結婚式の時の満足気な顔など、リアルに描かれたうさぎが一転して人間のような表情になるところが面白くて、娘も私も気に入っています。
読み聞かせでは、お互いに感じたことをどんどん言い合っています。ストーリーはもちろん、絵にだけ描かれている動物が「こんな風に言ってるんじゃない?」などと想像して。お互いの想像に笑ったり、「そんな風に思うんだ」という発見があったりします。赤ちゃんの時の読み聞かせとはまた違った醍醐味かなと思います。
最近の娘と私のお気に入りは、ヨシタケシンスケさんの絵本です。小児科の待合室にあってあまりに面白くて、作者を調べて、いろいろ読みました。中でも好きなのが『ころべばいいのに』です。
娘が小学生になって、クラスの中で気が合わない子がいるとか、あの子が言ったことですごく傷ついたという話を家でするようになったんです。私もいろいろアドバイスしたのですが、娘にはピンとこなかったみたいで。それがこの絵本を読んで、気持ちのもっていき方などがすごく腑に落ちたようなんです。
また私自身にとって、大事なことを思い出させてくれた絵本でもあります。社会人になりたての頃、人間関係に悩んで父に相談したことがありました。その時父が「えみが悔しがったり悲しんだりすることが、相手にしたら思うつぼかも。その人のために時間を使うなんてもったいない」と言ってくれたんです。また、以前欽ちゃん劇団にいた時に欽ちゃん(萩本欽一さん)に、「嫌なことがあった時に、正面から思いっきりぶつかると大けがしちゃうから、時にはうまくかわす技も必要だよ」と言われたことも思い出したんですよね。
私の大切な人たちがくれたアドバイスが両方ともこの絵本に書いてあって、しかも私が娘に伝えたいこともあって、私にとって何度も読み返したい絵本になりました。ただ、それが説教くさくなく、「ころべばいいのに」という言い方がチャーミングですよね。ヨシタケシンスケさんにお会いするのが今の夢です!(笑)。
私が子どもの頃、父は読み聞かせではなくその場でつくった話をしてくれました。お気に入りは、一休さんじゃなくて「サンキューさん」(笑)。おかげで楽しい気持ちで眠ることができました。読み聞かせは、お子さんにとってもお母さん・お父さんにとっても楽しくて大切な思い出になると思います。また私のように、子どものための読み聞かせを通じて、すばらしい絵本に出合えることもあると思います。ぜひ今の時間を楽しんでくださいね。
インタビューの中でご紹介した『ころべばいいのに』を、ミーテ会員3名様に抽選でプレゼントします。
プレゼントの応募は締め切りました。当選者の発表は、賞品の発送をもってかえさせていただきます。
はしの えみ
1973年、鹿児島県生まれ。萩本欽一主催「欽ちゃん劇団」1期生。TBS『王様のブランチ』の姫様として人気を博すほか、NHK『週刊こどもニュース』の6代目お母さん役など多岐にわたり活躍。夫は俳優の綱島郷太郎さん。2015年に長女を出産。