Vol.50 『なーんだ なんだ』作者 カズコ・G・ストーンさんインタビュー
赤ちゃんとの絵本の時間を楽しみたい、すべての方へ。選りすぐりの赤ちゃん絵本の誕生秘話や、作家さん・編集者さんが絵本に込めた思いを伺いました。赤ちゃん絵本を楽しむヒントが詰まったインタビュー、今回はカズコ・G・ストーンさんにご登場いただきます。
「やなぎむらのおはなし」シリーズを描き終え、新たな絵本のアイデアを考えていた時のことです。「なんだパンダ なんだパンダ これはなんだ これはパンダ」というフレーズがふと頭に浮かびました。これが『なーんだ なんだ』のアイデアの原点です。語呂合わせが面白くて、耳に快いでしょう。前から興味のあった赤ちゃん絵本に、今までにないスタイルでチャレンジしてみようと思い、さっそく描き始めました。
もともと美大でグラフィックデザインを専攻していたこともあって、イメージはすぐにできました。赤ちゃんは白と黒の画面に反応すると聞いていたので、パンダはぴったり。背景は赤しかないと思って、自分のイメージに合う赤の色を探しに画材屋さんに行きました。
夕方に行ったら、お店の明かりの下だと自分の求める赤がどれなのか、はっきりわかりませんでした。次の日は昼間に行ったのですが、曇りだったのでお店の外で絵の具のチューブを見ても今ひとつピンときません。晴れた日の午前中に出直して、ようやくこれだ!という赤を選ぶことができました。
シンプルな絵なので、パンダのアウトラインにも神経を使っています。ちょうどその頃、中国の隷書を習っていたのですが、隷書では一本の線を引く時、ゆっくりと、静かな強弱をつけるんですね。その線をアウトラインに使いました。それから、顔がきっちりと左右対称になりすぎないように、自分の目の感覚だけで描いています。赤ちゃんを対象にした絵本なので、人間的なあたたかみを出したかったのです。
『はなびドーン』は、万華鏡のような、カラフルできれいな絵本をつくりたい、という思いから生まれた絵本です。赤ちゃんは驚くのが大好きなので、ページごとにイメージが変わるよう、花火の色や形、大きさにこだわって描いています。テキストも、書かれている通りに読んだだけで臨場感が出るようにと、自分で何度も発音しながらつくっていきました。一番大変だったのは、印刷段階で花火の鮮やかな色がなかなか思うように出なかったこと。色が命の絵本なので、4回も色校正をくり返して、やっと完成しました。
赤ちゃんの脳は、真っ白なキャンバスのようなもの。だからそこに最初に入れるイメージは、できるだけ視覚的に楽しいもの、陽性のもの、大雑把なようでいてディテールもちゃんと描かれたものがいいと思っています。テキストは、聞いていて心が楽しくなるようなリズミカルな音になるように心がけています。赤ちゃんの脳には国境がないはずなので、世界中の赤ちゃんが大好きな絵本ができたらいいなと思いながらつくっています。
テレビの画面は消えてしまうけれど、本はそこにあって、いつでも触ったり、読んでもらったり、枕元に置いて寝たりできます。好きな絵本がそばにあるということは、安心感のひとつではないでしょうか。テレビや動画は所有できませんからね。赤ちゃんに絵本を読む時は、なるべくだっこして、声に強弱や抑揚をつけたりして、ゆっくりと読んであげたらいいと思います。読み方ひとつで、赤ちゃんの反応は随分と違うはずです。赤ちゃんが喜んだら、読んでいる方も楽しくなると思いますよ。
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カズコ・G・ストーン
東京都生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。1973年に渡米し、『Monster Mary Mischief Maker』で絵本作家デビュー。以後、日米で絵本を出版している。主な作品に『サラダとまほうのおみせ』をはじめとする「やなぎむらのおはなし」シリーズ、『おやすみクマタくん』(いずれも福音館書店)、『なーんだ なんだ』『どーこだ どこだ』『はなびドーン』(童心社)などがある。ニューヨーク在住。